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アンドロイド:ネットランナー第2版に備え、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のエラッタと裁定の要約

1番下から2番めの「現裁定おさらい」だけをごらんくだされば、要点はお伝えできると思います。
カード名には脚注をつけました。マウスオーバーで、その能力の要約が読めます。

《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》、アンドロイド:ネットランナー第2版に再録

最初に印刷されたのが4年前。ローテーションにより、いわゆる「スタン落ち」を迎える運命のカードでしたが、第2版に再録されたことで当面のあいだ使用が可能となりました。

しかし、いくたびかの裁定変更やエラッタまで行われている厄介なカードでもあります。このカードが第2版に収録されると分かってなお、最新の裁定や正確な挙動をビギナーのために要約した文書が乏しく、これは書き留めておく必要があると感じました。

そもそもアンドロイド:ネットランナーというゲームは裁定が1か月単位で切り替わったりします。しかも、その切り替わりがTwitterでの個人へのリプライという分かりにくい形で表明されることも多いため、プレイヤーは最新の裁定を追跡するのに骨を折ります。

ですが、それも楽しみの一つだと考えます。なにが楽しいのかと思われるかもしれませんが、このテキストをお読みになればお分かりいただけるかもしれません。だらだらとしていますがお付き合いください。

エラッタ

現在印刷されている日本語版の《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は古い記述であり、2016/7月に施行されたエラッタが適用されます。エラッタ後のカードテキストはこのようになっております。

Trace5– If successful, do meat damage to the Runner equal to the number of printed agenda points on agendas he or she stole during his or her last turn.

以下、拙訳

トレース5- 成功した場合、ランナーが直前のターンに盗んだ計画書の表記計画ポイントの合計に等しいミートダメージをそのランナーに与える。

違いは、計画ポイントが「表記計画ポイント/printed agenda points」になっていることのみです。表記計画ポイントというのは「計画書カードの、計画ポイントを表記する欄に書かれている数字」を指します。

例えば、ランナーが1ターンで2枚の《世界食料構想/Global Food Initiative》*1を盗んだら、そのランナーは合計4点の計画ポイントを持つ2枚のカードを得点エリアに置くことになりますが、そのランナーに対しコーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》を用い、表記どおり、合計6点のミートダメージを直後のターン、与えることができるというわけです。

このカードが呼んだいくつかの議論を記録しておきます。


計画書が盗まれていない時にプレイできる?

「Play only if the Runner stole an agenda during his or her last turn.(ランナーが直前のターンに計画書を盗んだ場合のみプレイする)」と書かれていません。では直前のターンに計画書を盗まれていない場合、コーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイできるのでしょうか?


この問題については裁定が一度切り替わっています。初代リードデザイナーのLukasは、「計画書を盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のトレースを仕掛けることはできない」との裁定を2015年8月に下しました。アンドロイド:ネットランナーには、恣意的に要約すると「意味のないことや、解決できないことをしてはいけない。空撃ち禁止」というルールがあるのです。0ダメージを与えることには意味がありません。

ただしこれは《洗浄屋/The Cleaners》*2がコーポの得点エリアにあれば別とされています。計画書が盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》によるダメージは0ですが、《洗浄屋/The Cleaners》はその0に追加の1ミートダメージを加えることができるというのです。

ですが、この裁定は覆されました。そもそも「解決できないことをしてはいけない」というルールには、「意味のないことをすることで、意味のある他の能力が発動して解決されるとしても、それは意味があることとは見なされないのでしてはいけない(意訳)」という文言が含まれています(リファレンスガイド18ページ、「能力の使用」を参照)。

2代目リードデザイナーであるDamonは、「トレースの結果が意味をなさないとしても、トレースそのものには常に状況を変化させる可能性がある(これまた意訳)」との見解を示し、トレースについての裁定を更新。「計画書を盗まれていない場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のトレースを仕掛けることができる」との裁定を下しました。2016年4月のことです。

ancur.wikia.com

The Corp can always play Punitive Counterstrike because it always initiates a trace. But if no other agendas were stolen during the Runner’s turn, Punitive Counterstrike would not do any damage.

以下、拙訳

《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は常にトレースを実行するため、コーポはいつでもそれをプレイできます。ですが直前のターンに他に計画書が盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はいかなるダメージも与えません。

0ダメージを与えるではなく、"would not do any damage."と明文化されたため、《洗浄屋/The Cleaners》が発動しないこともはっきりしました。

まとめ:
《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は、計画書が盗まれていなくてもプレイできる!その場合、トレース成功時には何も起こらない!


盗んだ計画書がランナーの得点エリアから移動していたらどうなる?

ランナーは《データ売人/Data Dealer》*3などの手段を用いることで、盗んだ計画書を放棄し、ゲーム外領域に移動させることができます。また、《ターンテーブル/Turntable》*4を用いることで、盗んだ計画書をコーポの得点エリアの計画書と交換することもできます。

こんな風に、計画書の移動がおこなわれた場合には、どうなるのでしょうか?じつは、この裁定も一度覆されているのです。Lukasは2015年6月に「直前のターンに盗まれた計画書がそのターン中に放棄されるか、もしくは《ターンテーブル/Turn Table》によって移動した場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はダメージを与えない」との裁定を下しました。

2016年2月、これを覆したのはJacob。FFGの公的なサポートによらない非公式FAQを管理するプレイヤーです。非公式とはいうものの、彼の名前は近年のアンドロイド:ネットランナー製品にエディターとしてクレジットされているので、半公式とでも言うべきでしょうか。とにかく、彼の裁定は公式に準ずるか、緊急時にはそれ以上の、重い意味を持ちます。

そのJacobに対し投げかけられたのが、「《Maya》*5が盗んだ《ビール計画/Project Beale》*6をR&Dの一番下に移動させた場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は2ダメージを与えますか?という質問。これに対しJacobは「はい。盗まれた計画書が得点エリアからコーポの得点エリアでない領域に移動した場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はさかのぼってその計画ポイントに等しいダメージを与えます」と答えました。

質問者はさらに、「計画書を放棄した場合の《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》の作用についても明確にしておきたいのですが?」と訪ねます。Jacobは「放棄された計画書も同じです。これは新裁定です。いま非公式FAQサイトの更新に取り掛かっています」と答えました。

まとめ:
盗んだ計画書がランナーの得点エリアにない場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はその計画書の表記計画ポイントをさかのぼり参照できる!


盗んだ計画書の価値が下がっていたらどうなる?

申し訳ないのですがこの件についてわたしには自信がもてません。話半分にお願いします。

2015年3月に公布された、公式FAQ 2.0の記述をごらんください。さきほど紹介した非公式FAQサイトから閲覧可能です。

ancur.wikia.com

What happens if the Runner steals an agenda worth 3 points, and the Corp plays Punitive Counterstrike with The Board rezzed? Does the Runner take 2 or 3 meat damage if the trace is successful?


The Runner would take 2 meat damage if the trace is successful, since the 3 point agenda is currently worth 2 points.

以下、拙訳

ランナーが3点の計画書を盗み、そして《The Board》*7がレゾされてから、コーポが《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイしたらどうなりますか?


3点の計画書の価値が現在は2点となっていることから、トレースが成功した場合、ランナーは2点のミートダメージを受けます。

これがわからない。盗まれた計画書の現在位置を問わず、表記点数に等しいダメージを与えるという裁定と噛み合っていないようにわたしには思えます。移動したことはチェックしないけれど、価値が下がったことはチェックする…。

なお、さきほどの2代目リードデザイナー、Damonの2016年4月の発言は、この質問を受けてのものです。

The Runner steals a copy of Breaking News, Turntables it to the Corp, and then plays Political Graffiti on that Breaking News. Is the Corp allowed to play Punitive Counterstrike on their turn?

以下、拙訳

《臨時ニュース/Breaking News》*8を盗んだランナーが、それを《ターンテーブル/Turntable》でコーポに渡し、そして《Political Graffiti》*9をその《臨時ニュース/Breaking News》に搭載しました。次のターン、コーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイできますか?

要するに計画書が0点になったらどうなりますか?という質問に、「他に」計画書を盗んでいなければ《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はいかなるダメージも与えないと。なにかおかしいなと思ったのですが、ここで気づいた、2016年4月の発言だから2016年7月のエラッタ前のことじゃないですか!考える必要なし!失礼しました。エラッタの原因は、やはりややこしすぎたということでしょうか。

まとめ:
盗んだ計画書の得点が下がった場合、その下がった点数を参照するというのはもはや使われていない裁定!表記されている点数だけを見てください!


《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》現裁定おさらい

  • 表記計画ポイントをチェックするので、《世界食料構想/Global Food Initiative》は3ミートダメージ、《ビール計画/Project Beale》は2ミートダメージ。
  • 直前のターンに計画書が盗まれていない場合もプレイできる。そうしたなら、トレースが成功した場合、何も起こらない。
  • 0点の計画書(《膠着/Standoff》など)を盗まれた直後のターンでもプレイできる。そうしたなら、トレースが成功した場合、何も起こらない。
    • これらによって、厳密には0点のミートダメージを与えているのかもしれないが、これをもってして「コーポがミートダメージを与えた」あるいは「ランナーがミートダメージを受けた」とは見なさない。そのため、《洗浄屋/The Cleaners》の発動条件は満たされない。
  • 盗まれた計画書が放棄されゲームから取り除かれるか、《ターンテーブル/Turntable》《Maya》などでランナーの得点エリアから離れている場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はその盗まれた計画書の点数を追跡して参照することができる。
  • 盗まれた計画書の価値が《The Board》や《Political Graffiti》などで下がった場合も、表記されている(下がる前の)計画ポイントをチェックする。

いやあ、第2版に《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》と《洗浄屋/The Cleaners》が併録されると聞いて、混乱が生じる前にこのへんを調べておいてよかった…。こういうふうに最新の裁定を調べるのもこのゲームの醍醐味だと改めて思います。

おまけ:《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》裁定とエラッタの変遷

2014 1月 FFG 《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》の封入されているTrue Colors、発売
2015 6月 Lukas 盗まれた計画書がランナーの得点エリアを離れた場合は0ダメージ(訂正済)
2015年 8月 Lukas 《The Cleaners》がある時のみ、計画書が直前のターンに盗まれていなくてもプレイ可、その場合は1ダメージ(訂正済)
2016 2月 Jacob 盗まれた計画書がランナーの得点エリアを離れた場合も追いかけ、それと同点のダメージを与える
2016 4月 Damon 計画書が盗まれていなくてもプレイ可、また、0点の計画書が盗まれた場合もプレイ可。ただしいずれもダメージを与えたとは見なさない
2016 7月 FFG 《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》、表記計画ポイントだけをチェックするようにエラッタ

*1:表記は3点の計画書だが、ランナーの得点エリアにある間は価値が-1点される

*2:コーポがミートダメージを与えるたび、追加で1点のミートダメージを与える計画書

*3:リソース。1クリック消費、計画書を放棄する:9クレジットを得る。

*4:コンソール。計画書を盗むたび、それをコーポの得点エリアの計画書と交換してよい。

*5:アクセスしたR&Dのカードを、それがたとえ盗んだ計画書であってもR&Dの一番下に加えることができるコンソール。

*6:3アドバンス/2点の計画書だが、余剰の2アドバンスごとに点数が1増える

*7:ランナーの各計画書を-1点するアセット

*8:1点の計画書。

*9:アーカイブへのランが成功した場合、コーポの計画書の上に「この計画書は-1点」と書かれている条件カウンターとして搭載できるイベント