『アンドロイド:ネットランナー』最新版ランのタイミング構成(2017 年 12 月より有効)
ランのタイミング構成をおさらい。これは手元にないとしばしば処理ミスを招くので、印刷物として第 2 版のビギナーズガイドに付属させなかったのは良い判断ではなかったと考えています。旧・基本セットにもランのタイミング構成表は付属していますが、これはだいぶ古くなっているので、いずれにせよ Web で最新ルールをチェックする習慣をつけさせようということでしょうか。
ただ、ランのタイミング構成はリファレンスガイドの奥の方にあってアクセスしづらいので、こうやってブログのエントリにします。
消費型能力ウィンドウと優先順位について
消費型能力ウィンドウがどこにあるのかを確認するのが、ランのタイミング構成を読み返す最大の理由だと思います。
- アイスへのアプローチ前、ジャックアウト判断直前
- アイスのレゾ時(同時に、アイスでないカードのレゾも可能)
- アイスブレイカー使用可能時
- サーバーへのアプローチ前、ジャックアウト判断直前
- ランの成功直前(同時に、アイスでないカードのレゾも可能)
そもそも消費型能力とは?という方にご説明すると、「コスト:効果」のように、コロンがテキストに使われている能力のことです。多くのアイスブレイカーが持つ強度上昇能力は、消費型能力です。
1:強度 +1 。
あるいは《身代わり/Fall Guy》の
:2 を得る。
などがその例です。
上記のように、クリックをコストとして含まない消費型能力であれば、自分のターンでなくても使用できます。その代わり消費型能力ウィンドウが開いているときにしか使用できません。
ここでのウィンドウは窓でなく、時間帯やチャンスのことを示します。「消費型能力ウィンドウが開いている」と表現されているあいだ、各プレイヤーは以下に説明する優先順位のもとに消費型能力を使用できます。この処理が終わるとウィンドウが閉じ、タイミング構成が進行します。両プレイヤーが「何もせずパス」を表明するまでこのウィンドウは閉じないことに気をつけてください。両者の合意なくスキップされることはありません。
- 一定のタイミング構成に到達すると、消費型能力ウィンドウが開く(表の中ではで示される)。
- ここでは、アイスでないカードのレゾウィンドウや、計画書の得点ウィンドウも開いているとする。
- そのターンを進行しているプレイヤーは…
- アクティブな自分のカードの消費型能力(ただし、クリックをコストに含まない)の使用
- カードのレゾ(ターンを進行しているプレイヤーがコーポであるなら)
- 計画書の得点(コーポのターン中であるなら)
- 以上を好きな数だけ、望む順番で、何度でも行ってよい。
- その後、そのプレイヤーは行動機会をパスする。
- ターンを進行しているプレイヤーのパスを受け、そのターンを進行していないプレイヤーは…
- アクティブな自分のカードの消費型能力(ただし、クリックをコストに含まない)の使用
- カードのレゾ(ターンを進行していないプレイヤーがコーポであるなら)
- 計画書の得点(コーポのターン中であるなら)
- 以上を好きな数だけ、望む順番で、何度でも行ってよい。
- その後、そのプレイヤーは行動機会をパスをする。
- 「いかなる行動もとらずに、行動機会をパスする」を両プレイヤーが続けて選択するまで、 2. と 3. を繰り返す。
また、アンドロイド:ネットランナーでは、「妨害」や「回避」のキーワードを持つ能力を除くと、相手のアクションにいっさい割り込むことができません。いくつか例をあげます。
例1:クリックを消費してのリソースのトラッシュに割り込むかたちで、ランナーは消費型能力を使用できません。
ランナーがタグを受けている間、コーポが 2 とを消費することで《身代わり》をトラッシュするとを宣言しました。
このさい、ランナーが対応して《身代わり》の「:2 を得る。」の能力を使用し、せめて 2 を得ようとしたのであれば、ルールによりこれは禁じられます。
プレイヤーがクリックを消費してアクション(リソースのトラッシュ)を行っているあいだは、消費型能力ウィンドウが開くことがないためです。《身代わり》はコーポにトラッシュされ、ランナーは何も得られません。
例2:クリックを消費してのリソースのトラッシュに割り込むかたちで、ランナーはリソースのトラッシュを妨害する消費型能力を使用できます。
ランナーがタグを受けている間、コーポが 2 とを消費することで《イソップ質店/Aesop's Pawnshop》をトラッシュすると宣言しました。
このさい、ランナーが対応して《身代わり》の「:他のリソース1つがトラッシュされることを妨害する。」を使用すればトラッシュは妨害され、《イソップ質店》はプレイエリアに残ります。なお、この場合でもコーポは2 とを消費します。
「妨害する/回避する」と書かれている能力は、その対象となる事象が発生したのなら、それらは消費型能力ウィンドウの有無や優先順位に関係なく使用できます。
例3:コーポのターンでは、コーポの望むだけのレゾや能力の使用、得点が終わらない限り、ランナーに行動機会が回りません。
コーポのターンでのレゾ可能ウィンドウ+消費型能力ウィンドウにおいて、コーポは《マリアZ0L0K4/Malia Z0L0K4》をレゾし、《身代わり》のテキストを空白にしようとしました。
このさい、ランナーは対応して《身代わり》の「:2 を得る。」の能力を使用して、 2 を得ようとしたのであれば、ルールによりこれは禁じられます。
コーポのターンの消費型能力使用可能ウィンドウなので、コーポがまず望むだけのカードをレゾしたり消費型能力を使用してからでないと、ランナーに行動機会が移りません。《身代わり》は空白になります。
例4:優先順位の高いプレイヤーがパスを宣言しなかった場合
ランナーのターンでのレゾ可能ウィンドウ+消費型能力ウィンドウにおいて、コーポは《マリアZ0L0K4/Malia Z0L0K4》をレゾし、《身代わり》のテキストを空白にしようとしました。
このさい、ランナーは対応して《身代わり》の「:2 を得る。」の能力を使用して、 2 を得ようとしたのであれば、それは認められません。
ですが、もしランナーが「パスした覚えはない。このウィンドウにおいて自分はまだ何も宣言していないのだから、優先順位の関係から自分はコーポの行動の前に《身代わり》を使用する権利がある」と強弁したら揉めます。困った話です。
この例の解決策としては、優先順位の低いコーポのプレイヤーがあらかじめ、マリアのレゾ前に「このウィンドウで何かしますか?」とランナーに尋ねるとよいでしょう。
仮にこの「何かしますか?」がただのブラフで、その結果ランナーが望まないタイミングで《身代わり》をトラッシュすることに繋がっても、ルール上はなんの問題もありません。ブラフは、アンドロイド:ネットランナーの重要な側面であることや、どのプレイヤーも秘匿情報を口頭で告げるにあたって真実を伝える必要はないことはルールに明記されています。
この場合であれば、コーポのサーバーの中にインストールされまだレゾされていないというカードが、《マリア》のような《身代わり》の使用をうながすカードであるかどうかは秘匿情報です。口頭で伝える情報に真実が含まれている必要はありません。「《マリア》かもしれないけれど、《身代わり》を使わないでパスする?」と露骨に誘導しても問題ありません。
その一方で、秘匿領域の意図的な公開や開示は認められていないことに気をつけてください。能力や効果によらずにインストール状態のコーポのカードをそのコーポがランナーに見せたり、ランナーがグリップをコーポに見せたりして、相手プレイヤーの判断に干渉することは、アンドロイド:ネットランナーのブラフゲーとしての哲学を損なうものとされています。大会でやったら警告を受けます。2回やったら失格です。
ランのタイミング構成
[1] 開始:ランナーはランを開始し、攻撃されるサーバーを宣言する。
・コーポの所有する悪名 1 つにつき、ランナーはラン中に消費できる 1 を得る。
・攻撃されるサーバーを守っているアイスが 1 つ以上ある場合、[2]へ。
・攻撃されるサーバーを守っているアイスがない場合、[4]へ。
[2] アイスへのアプローチ:ランナーは攻撃されるサーバー守っているアイスに、最外殻から最内殻へと順番にアプローチしていく。ラン中に既に通過された位置にアイスがインストールされた場合、ランナーはそれにはアプローチしない。アプローチされている最中のアイスがアンインストールされた場合、現在開いているあらゆる消費型能力ウィンドウが閉じた後、そのアイスはただちに通過され、ランは継続する。
[2.1] (消費型能力が使用可能)
[2.2] それがこのラン中に最初にアプローチされたアイスでない場合、 ランナーはジャックアウトするかしないかを選べる。
・ランナーがジャックアウトする場合、[7]へ。
・そうでない場合、[2.3]へ続く。
[2.3] アプローチされたアイスがレゾ可能。 (消費型能力が使用可能)、(アイスでないカードがレゾ可能)
[2.4] アプローチされたアイスがレゾされているかを両プレイヤーは確認する。
・アプローチされたアイスがレゾ状態である場合、[3]へ続く。
・アプローチされたアイスが非レゾ状態である場合、アプローチは終了する。[4]へ。
[3] アイスにエンカウント:ランナーはアイスにエンカウントする。(条件節「エンカウント時…」の発動条件が満たされる。)エンカウントされている最中にアイスがアンインストールされた場合、現在開いているあらゆる消費型能力ウィンドウが閉じた後、そのアイスはただちに通過され、ランは継続する。
[3.1] ランナーはエンカウント中のアイスに作用できる。(消費型能力が使用可能)
・ラン中にランナーがサブルーチンをブレイクできる唯一の箇所。アイスを迂回した時のように[3.1] に到達していないのなら、そのアイスのサブルーチンはブレイクされていない。
[3.2] エンカウント中のアイスのブレイクされなかったサブルーチンすべてを解決する。
・ランが終了した場合、エンカウントも終了する。[7]へ。
・そうでない場合、エンカウントは終了する。[4]へ続く。
[4] アイスの通過:ランナーはアイスを通過する。(条件節「通過時…」の発動条件が満たされる。)
・通過したアイスよりも内殻の位置に、そのサーバーを守っている他のアイスがある場合、[2]へ。
・通過したアイスよりも内殻の位置に、そのサーバーを守っているアイスがもはやない場合、[5]へ。
[5] サーバーにアプローチ:ランナーは攻撃されているサーバーにアプローチする。
[5.1] (消費型能力が使用可能)
[5.2] ランナーはジャックアウトするかしないかを選べる。
・ランナーがジャックアウトする場合、[7]へ。
・そうでない場合、[5.3] へ続く。
[5.3] (消費型能力が使用可能)、(アイスでないカードがレゾ可能)
[5.4] ランは成功(「成功した場合…」の効果を解決し、次に条件条件節「成功時…」の発動条件が満たされる。)
・「成功した場合…」の効果は、その効果が指定するサーバーが攻撃されているサーバーであった場合のみ解決する。
・「成功した場合」を持つ能力の効果がサーバーを指定していない場合、ラン中に攻撃されているサーバーが替わったとしても能力を解決する。
[5.5] カード群にアクセスする。アクセスされるカードの枚数を決定する。アクセスされるカード 1 枚ごとに、以下の処理を繰り返す。
[5.5.1] そのカードにアクセスする(条件節「アクセス時…」の発動条件が満たされる。)
[5.5.2] ランナーは可能であるなら、トラッシュコストを払うか、あるいは能力によって、そのカードをトラッシュしてよい。
[5.5.3] そのカードが計画書であった場合、ランナーはそれを盗まなければならない。
[5.5.4] そのカードがトラッシュされることも盗まれることもなかった場合、それを脇に置く。
[5.6] アクセスされ脇に置かれていたカードすべてを元の状態でサーバー内に戻す。[6] へ続く。
[6] ランの終了:ランナーは未消費の悪名クレジットすべてを失う。ランは終了する。(条件節「ランの終了時…」の発動条件が満たされる。)
[7] 失敗したランの終了:ランナーは未消費の悪名クレジットすべてを失う。ランは終了し、失敗する。(条件節「失敗時…」や条件節「ランの終了時…」の発動条件が満たされる。)