『アンドロイド:ネットランナー』「カンパラの支配/Kampala Ascendent」裁定拙訳と個人的補足
最後の小拡張のUFAQが来ました。初歩的な部分については以前お送りした、こちらもご覧いただくとより理解が深まるかもしれません。
removeanddiscard.hatenablog.com
カンパラの支配にとどまらず、いくつかのカードの追加裁定や、裁定そのものの変更もありました。
箇条書きで書かれている部分は、補足です。例にあげられているカードのざっくりした説明など。
情報源
裁定追加、および変更
◆ファトゥマ管理人/◆Warden Fatuma
コスト: 1
資財:人物レゾ状態のバイオロイドのアイスはそれぞれ「可能なら、ランナーはを失う。」を他の全てのサブルーチンの前に得る。
《◆ファトゥマ管理人》がアクティブなときに、《Wetwork Refit》を搭載しているアイスはどんな順番でサブルーチンを得ますか?
サブルーチンは「タイムスタンプ順」に付与されます。最初にアクティブになったカードが最初にサブルーチンを付与し、そして他のカードが2番目のサブルーチンを付与します。このことから、最後にアクティブになったカードが1番目のサブルーチンを付与し、続けて他のカードがサブルーチンを付与します。
- 《Wetwork Refit》任務:「Wetwork Refitをレゾ状態のバイオロイドのアイスの上に『ホストのアイスは"1ブレインダメージを与える。"を他の全てのサブルーチンの前に得る』のテキストつき条件カウンターとしてインストールする。」Intervention
- しょっぱなからナンですが、スッキリしない裁定だ…。「追加のサブルーチンをアイスに付与するカードが複数アクティブになったらどうなるか」を超あわてて考えたような。
論理爆弾/Logic Bomb
コスト: 0
リソース:仮想:現在エンカウント中のアイスを迂回する。残りのクリックを全て失う。
既に全てのサブルーチンがブレイクされているアイスを《論理爆弾》で迂回すると、カードの能力(《インバーシフィケイター/Inversificator》など)からは、それらサブルーチンは依然としてブレイク済みと見なされますか?
はい。
- なんのこっちゃ?これは、私の質問が元になっていると思われます。
Kit forces Anansi to gain code gate and the Runner breaks its all 3 subroutines by Inversificator but at last they uses Logic Bomb to bypass it. Does the Runner still take 3 net damage but Inversificator has an opportunity to swap the next ice with another one? @ANR_RulesWiki pic.twitter.com/6qzXUsI5R4
— Fobby (@RemoveNDiscard) 2018年6月28日
- リファレンスガイドには大筋で「迂回されたアイスの全てのサブルーチンはブレイクされていない」と書かれているのです。
- 《ファム・ファタル/Femme Fatale》と《内部犯行/Inside Job》くらいの、「エンカウント時」に迂回するカードしかなかった頃からのルールなので、Terminal Directive以降できるようになった「サブルーチンをブレイクしてからの迂回」が想定されていないものと思われます。一応、最新ランのタイミング構成には、「[3.1] に到達していないのなら、そのアイスのサブルーチンはブレイクされていない」と、つまり[3.1]に到達しているならその後なにがあってもブレイク済みと見なすことを匂わせる記述はあるのですが。
- この質問は、《インバーシフィケイター》でサブルーチンをすべてブレイクした《アナンシ/Anansi》を結局《論理爆弾》で迂回したのなら、「サブルーチンをすべてブレイクしないまま通過した」と見なされ、ランナーは《アナンシ》から3ネットダメージを受けるが、かわりにそのターン、まだ《インバーシフィケイター》のアイス交換条件が満たされていないことから次のアイスを交換できるのか、という意味です。
- この質問に関しては、今回のUFAQによって、「エンカウント中にアイスを迂回しても、ブレイク済みのサブルーチンはブレイク済み。よって《アナンシ》のネットダメージは受けないし、《インバーシフィケイター》のアイス交換はこのターンにもう使用できない」という答えが出ます。
- 《インバーシフィケイター》:アイスブレイカー「各ターン、インバーシフィケイターで全てのサブルーチンをブレイクしたアイスを最初に通過した時、そのアイスを他のアイスと交換してよい。」
- 《アナンシ》:アイス「アナンシとのエンカウント終了時、ランナーがその全てのサブルーチンをブレイクしていない限り、3ネットダメージを与える。」
◆ロキ/◆Loki
コスト: 6
アイス:バイオロイドランナーがロキにエンカウントした時、レゾ状態のアイスを1つ選ぶ。ランの終了まで、ロキはそのアイスのサブタイプと、他の全てのロキのサブルーチンの前にそのアイスのサブルーチンを得る。
ランナーがグリップを全てスタックに加えてシャッフルしない限り、ランの終了。強度: 3
HB: 5
血と水/Blood and Water
ランナーがグリップに0枚の場合でも、《ロキ》からランの終了を受けないためにグリップをスタックに加えてシャッフルを選ぶことはできますか?
はい。スタックが最低でも2枚なら、それはシャッフル可能です。
- これは裁定の変更です。以前は、グリップが0枚の場合は必ずランの終了を選ばなければいけませんでした。
No. Loki has a must choose between two things effect. Just like the Fairchildren, you must pick an option you can resolve.
— Project ANCUR (@ANR_RulesWiki) 2017年7月14日
- unless文の解釈が代わり、must選択ではなくなったようです(同じくunlessが使われている419関連で確認可能)。
No the corp does not have to pay. 419 does not have a “must” ability, so the Corp is not required to choose an option that will resolve. The card cannot be exposed, so the corp can freely allow the ability to resolve without doing anything.
— Project ANCUR (@ANR_RulesWiki) 2018年4月17日
The Turning Wheel(輪廻の車)
コスト: 2
リソース:仮想HQかR&Dへのランが終了するたび、そのラン中に計画書を盗んでいない場合、The Turning Wheelにパワーカウンターを1つ置く。
搭載されているパワーカウンター2つ:このランの残りの間、HQかR&Dのカードに追加で1枚アクセスする。中立: 1
裁定:カンパラの支配
◆ゼロ/◆Zer0
コスト: 1
ハードウェア, 1ネットダメージを受ける:1を得て、カードを2枚引く。この能力は1ターンに1度のみ使う。
アナーク: 3
《ゼロ》のダメージは妨害できますか?
《ゼロ》のダメージは妨害できますが、それではコストが充分に払われなかったものとされ、ランナーが1を得たりカードを2枚引くことはありません。
《ゼロ》のダメージを妨害してから、ランナーは再びこの能力の使用を図ることはできますか?
はい。コストが妨害されたなら、能力は「発動した」状態に入らないので、まだ使用されていません。
《Guru Davinder》がインストール状態のときに《ゼロ》を使おうとするとどうなりますか?
《Guru Davinder》は任意の能力ではないため、インストール状態である限り《ゼロ》を使用するたびにダメージを妨害されることになります。
そのたびに、ランナーは《Guru Davinder》をトラッシュするか、4払うかしなければいけません。これらは《ゼロ》の能力を「発動した」状態へは持っていかないので、《Guru Davinder》がアンインストールされることでランナーは《ゼロ》を自由に使えるようになります。
- 《Guru Davinder》リソース。「全てのネットダメージ及びミートダメージを妨害する。Guru Davinderが1点でもダメージを妨害するたび、4支払わない限りこれをトラッシュする」The Liberated Mind
◆ヒッポ/◆Hippo
コスト: 2
ハードウェア各ターン、ラン中に最外殻のアイスのサブルーチン全てを最初にブレイクした時、ヒッポをゲームから取り除くことでそのアイスをトラッシュしてよい。
アナーク: 5
ランナーは《シンキロウ/Mirāju》を《ヒッポ》でトラッシュできますか?そうしたなら、そのランナーはアーカイブへ行きますか?
はい、ヒッポは《シンキロウ》のサブルーチンをブレイクしたあと使用できますが、ランナーはアーカイブに行きません。《シンキロウ》の能力は、通過時(ランのステップ4)に、その表記サブルーチンをランナーがブレイクしたかどうかをチェックします。《ヒッポ》の能力は、サブルーチンが全てブレイクされるとすぐ発動する(ステップ3.1)ので、《シンキロウ》による「『アイスの通過』を『アーカイブへ移動』に置換」はすでにアクティブではありません。
- 「ブレイクした時(ヒッポ)」vs.「ブレイクして、通過した場合(シンキロウ)」は前者が優先処理され、そのことで後者はアンインストールされるので解決されないわけです。
- 《シンキロウ》:アイス「シンキロウの表記サブルーチンをランナーがブレイクした場合、そのランナーはシンキロウを通過するかわりにアーカイブへのランになり、あるなら最外殻のアイスにアプローチする。シンキロウをデレゾする。」
PADコネクタ/PAD Tap
コスト: 0
リソース各ターン、コーポがカードの能力からクレジットを最初に得た時、君は1得てよい。
, 3:PADコネクタをトラッシュする。コーポのみがこの能力を使用できる。クリミナル: 1
《アドニスキャンペーン/Adonis Campaign》のようなカードからコーポがクレジットを受け取った時に《PADコネクタ》は発動しますか?
いいえ。コーポは《アドニスキャンペーン》からクレジットを「受け取る」ものです。
- 《アドニスキャンペーン》のように「カードの上にあるクレジット」は、条件を満たしたとき、それをプレイヤーが「受け取る/take」というキーワードで表現します。それ以外の効果によるクレジット増加は、現状ではすべて「得る/gain」と表現します。
- 日本語環境では、「take」も「得る」に訳されていることがあるので、これじゃわからないじゃないか!と憤ったものですが、ネイティブ・イングリッシュのかたがたが原語版でプレイする場合も処理に戸惑われているようなのでセーフ?
- ゲームデザインとしてもフレーバーとしても、《PADキャンペーン/PAD Campaign》だと発動できて《アドニスキャンペーン》だと発動できないことに何か意味があるのか、よくわかりません…
フレーム=アウト/Frame-out
コスト: 2
ハードウェア:改良フレーム=アウトはプログラムを1つ搭載できる。
フレーム=アウトのインストール時、その上に9を置く。このクレジットは搭載されているプログラムを使用するための支払いに使用する。
フレーム=アウトの上のクレジットを使用したターンの終了時、搭載されているプログラムをトラッシュする。シェイパー: 3
《フレーム=アウト》に搭載されているクレジットを《自己変形コード/Self-modifying Code》を使用してのインストールコストの支払いに使用できますか?
いいえ。プログラムのインストールコストを支払うことはそのプログラムを使用することではなく、かつプログラムのインストール時に《自己変形コード》はすでに《フレーム=アウト》に搭載されていないので、どちらのカードも《フレーム=アウト》の上のクレジットを使用する条件を満たしていないということになります。
- インストールコストの踏み倒しができたほうがカードとしては面白かったような気はします。
◆カシー回線/◆Kasi String
コスト: 1
リソース:仮想各ターン、最初に遠隔サーバーへのランが成功した時、0枚以上のカードにアクセスして計画書を盗んでいなかった場合、カシー回線の上にパワーカウンターを1つ置いてよい。
カシー回線の上に4つ以上のパワーカウンターがある時、これを1点の計画ポイントを持つ計画書として君の得点エリアに加える。中立: 0
《◆カシー回線》が得点エリアにある場合、ランナーが別の《◆カシー回線》をインストールしたらどうなりますか?
何も起こりません。
- 当たり前だろ、とお思いでしょうか。こんな質問をするやつはどこのどいつだとお思いなら、それは私です。
https://twitter.com/RemoveNDiscard/status/1011395940324790272
I've thought when a second copy of unique card becomes active, the rule only cares the title of other active card so not considerd to whether first copy of card is unique or not. Thanks for correct my missunderstand. pic.twitter.com/7BfU1Fdiaa
— Fobby (@RemoveNDiscard) 2018年6月26日
- リファレンスガイドには、要約して「ユニークカードがアクティブになると、他の同名のカードはただちにトラッシュされます」としか書かれていないのです。ランナーの得点エリアにある《◆カシー回線》はユニークカードであるという特性を失っていますが、名前は失っていないので、「同名のカードはトラッシュ」というルールからは逃れられません。ルールの改定が必要ですね。
ムティ・ムウェクンドゥ:生命の改良/Mti Mwekundu: Life Improved
ID:部署
1ターンに1度、ランナーがいずれかのサーバーにアプローチした時、そのサーバーの最内殻の位置に、全てのコストを無視してアイスを1つインストールしてよい。ランナーはそのアイスへのアプローチ状態になる。
最小デッキ枚数: 45 / 影響値上限: 15
ジンテキ
《ムティ・ムウェクンドゥ》でアイスをインストールする時、コーポはそのサーバーを守っている他のアイスをトラッシュできますか?
はい。
《ムティ・ムウェクンドゥ》でアイスをインストールすることは《K. P. Lynn》を1度のランで2回発動させることになりますか?
はい。《K. P. Lynn》の発動条件が満たされるのはランのステップ4、サーバーを守っている全てのアイスをランナーが通過した時です。《ムティ・ムウェクンドゥ》そのものはランのステップ5、ランナーがサーバーにアプローチするまで発動条件が満たされません。《ムティ・ムウェクンドゥ》の能力は、最後にインストールされたアイスにおけるステップ2へとランナーを引き戻します。そのため、ランナーがそのアイスにエンカウントして通過した場合、《K. P. Lynn》の発動条件を再び満たします。
- カードの効果がインストールを指示する場合は常にインストールアクションが発生するので、自由になにかをトラッシュできますが、それはこのカードのように最内殻の変則的なインストールでも例外ではないようです。
- 《K. P. Lynn》強化。「ランナーがこのサーバーを守っているアイスを全て通過した時、そのランナーはタグを1つ受けるか、ランの終了かをしなければならない。」Terminal Directive
- これも似たような質問をさせていただいてました。
@ANR_RulesWiki Can Code Replicator trigger the every ability of Awakening Center, K. P. Lynn and Caprice Nisei twice per a run?
— Fobby (@RemoveNDiscard) 2018年5月5日
ムリンジ/Mlinzi
コスト: 7
アイス:セントリー-対人ランナーがスタックの一番上から2枚のカードをトラッシュしないかぎり、1ネットダメージを与える。
ランナーがスタックの一番上から3枚のカードをトラッシュしないかぎり、2ネットダメージを与える。
ランナーがスタックの一番上から4枚のカードをトラッシュしないかぎり、3ネットダメージを与える。強度: 5
ジンテキ: 3
《ムリンジ》のサブルーチンが要求するトラッシュ枚数よりスタックのカードが少ない場合でも、ランナーはスタックのトラッシュを選択してネットダメージを回避できますか?
はい、ですが最低でも1枚はトラッシュできるカードがスタックにある場合のみです。スタックが空であるなら、ランナーはネットダメージを受けなければいけません。
- これも先の「unless」の裁定変更に伴って「部分的に解決できるなら、選択可能」ということでしょう。
まとめ
この拡張と関係ないんですが、unlessが未だによくわかりません。特にFairchild。「End the run unless the Runner pays 4」は、プールに1しかない時でも、クレジット支払いを選択してランの終了を拒否できるのか(できるはず)、あとカードのトラッシュとブレインダメージは妨害してもランの終了を拒否できるのか(選んだ上で妨害していいのか、昔からわからない。他のFairchildは選んだうえで妨害可能なんですが、そもそもの書式が違うので)。これは問い合わせて、答えを頂いたら追記します。
あー…最後の拡張の裁定が終わってしまった。アンドロイド:ネットランナーが終わる…。日本語版が出ているという意味では本当にこれで最後ですね。次は最後の大拡張Reign and Reverieの裁定の翻訳を行います。終わるのかよ…嘘だろ…
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※カードテキストは筆者による訳であり、正式な日本語版と異なります。