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アンドロイド:ネットランナー解説(第2版も対応):ホスト(搭載)/hostとは

「ホストとなることができる」とか「他のカードの上にのみインストールする」ってどういうこと!?ここでは特に、このゲーム固有のルールである、ホストのカードの上に別のカードが搭載される例にしぼって説明します(カードにトークンを搭載された場合の扱いについても補足しています)。ひとくちにホストと言ってもカードごとにさまざまな挙動があり、一度に覚えるのは困難でしょう。必要な時に必要な箇所だけ参照してください!

下が「ホスト」で、上が「搭載されている」

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下記の解説を読んでいくうち、位置関係がわからなくなった場合はこの図をふたたび参照してください。また、このエントリにおいてのみ、ホストのカードをカードA、搭載されているカードをカードBと呼称する場合があります。

カードAが別のカードBのホストになる、あるいはカードAに別のカードBが搭載される、そういった関係が発生する4つの例

既にインストール済みのカードAの上に、別のカードBを乗せる、すなわち搭載することがあります。Aは「Bのホストであるカード」となり、Bは「Aに搭載されているカード」になります。このようにAとBの間に搭載関係が生まれることを搭載と呼び、それは以下の例いずれかによってもたらされます。

例1。カードAに「このカードは、別のカードのホストとなることができる」と記述されている場合。

《ジン/Djin》《Dinosaurs》など。

インストールアクションによってカードBをその上に表向きにインストールできます。そのさい通常どおりカードBのインストールコストを支払います。カードBに「別のカードの上にのみインストールする」と書かれている必要はありません。

カードBがプログラムであれば、指示がない限りランナーのメモリユニットを消費します。

例2。カードBに「このカードは、別のカードの上にのみインストールする」と記述されている場合。

《個人的接触/The Personal Touch》《パラサイト/Parasite》など。

カードBのテキストが指示する条件にあてはまっているカードAが、既に場に出ている場合のみインストールできます。そのカードAの上にのみ、インストールアクションによってインストールコストを払って表向きに搭載してインストールします。

カードAに「このカードAはホストとなることができる」と書かれている必要はありません。

カードBがプログラムであれば、ランナーのメモリユニットを消費します。

指示されているカードの上以外の場所にはインストールできません。なんらかの効果がその場所以外へのインストールを強制したとき、Bはただちにトラッシュされます(妨害できません)。

例3。カードAがその固有の効果や能力によって別のカードを搭載する場合。

《通りの行商人/Street Peddler》など。

搭載のためのインストールコストは指示がなければ不要で、その上のカードは指示がなければ表向きです。

他の例と異なり、搭載されているカードBはプレイもインストールもされておらず非アクティブであるため、例2のような「特定の別のカードの上にのみインストールする」の記述の影響を受けず搭載が可能です。

搭載されているカードBがプログラムであったとしてもそれはインストールされていないため、メモリユニットは消費されません。

この例のように、カードAが固有の効果や能力によって別のカードを搭載する場合は、その効果や能力によってのみAはホストとなることができます。よって、例2のように「別のカードの上にのみインストールする」と書かれていないカードBを、このカードAの上にコストを払ってインストールすることはできません。

例4。「この任務/イベントを、条件カウンターとして別のカードの上にインストールする」と書かれている場合。

《MCAの密告者/MCA Informant》など。

この場合はプレイコストを払うことでインストールできます。

カードAの上に「ホストとなることができる」と書かれている必要はありません。

基本的には例2と同じですが、ルール上、いちど条件カウンターとなったオブジェクトはもはやカードではなく、トークンにコンバージョン/conversionしたものと見なされます。

トークンである条件カウンターは、カードを対象としたいかなる効果の影響も受けないことに注意してください。

いちどコンバージョンした条件カウンターは、ホストがトラッシュされるなどしてプレイエリアから離れるまでその状態を維持し、プレイエリアから離れて以降はふたたびカードと見なされ所有者の捨て札置き場に戻ります。

すべての例に共通する、ホストと搭載についての原則

ホストと搭載されているカードの関係を、なんらかの効果によらず後から修正することはできません。

例:ランナーは既にインストール済みの《ミミック/Mimic》を、後からインストールされた《Dinosaurs》の上に搭載しようと考えた。そのためにまずf:id:fobby:20171229231445j:plainを消費してインストールアクションを起こし、グリップから《Morning Star》を何にも搭載することなくインストールすると、同じアクションで《ミミック/Mimic》をトラッシュした。ランナーはそののち《回収ラン/Retrieval Run》によるランを成功させ、ヒープの《ミミック/Mimic》を《Dinosaurs》の上に搭載してインストールする。

例:ランナーもコーポも、既にアイスに搭載されている《パラサイト/Parasite》を別のアイスの上に移動させることができない。

  • トークンについても同じです。場に出ているカードの上に搭載されているトークンは、効果によらずに別のカードの上や誰かのクレジットプール、あるいはトークンバンクへ移動させることができません。
    • 例:ランナーは《アーミテージ式コード破壊/Armitage Codebusting》の上に搭載されているクレジットを、それが持つ「f:id:fobby:20171229231445j:plain: アーミテージ式コード破壊から2f:id:fobby:20171229231623j:plainを得る。」の能力を介することなく自分のクレジットプールへ移動させることができない。
    • 例:コーポは《ジューンバグ計画/Project Junebug》に搭載されているアドバンストークンを《Trick of Light》を使うことで他のアドバンス可能なカードの上に移動させる。

指示を守る限り、ホストが搭載できるカードの枚数に制限はありません。

例:ランナーはメモリコスト0のプログラムを《ジン/Djin》の上に何枚でもインストールできる。

例:ランナーは《個人的接触/The Personal Touch》3枚を《ミミック/Mimic》に搭載したので、その《ミミック/Mimic》の強度は6となった。

例:ランナーはf:id:fobby:20171229231445j:plainを1つ消費してインストールアクションを起こし、すでに《Dinosaurs》の上に搭載されていた《ミミック/Mimic》をトラッシュ、同じインストールアクションでグリップの《ゴルディアン・ブレード/Gordian Blade》を《Dinosaurs》の上に搭載するかたちでインストールした。《Dinosaurs》はアイスブレイカーを1つしか搭載できず、ランナーは既にインストールされているプログラムを他のプログラムのインストールアクション開始時に自由にトラッシュできる。

ホストがトラッシュされた場合、搭載されているカードもトラッシュされます。これは妨害できません。

例:搭載中の《パラサイト/Parasite》によって強度が0以下となった《エニグマ/Enigma》がトラッシュされた。この時《パラサイト/Parasite》もトラッシュされるが、それは《犠牲用装置/Sacrificial Construct》で妨害することができない。

  • トークンを搭載しているカードがトラッシュされた場合、その上のトークンも取り除かれ、バンクに戻ります(そのトークンが条件カウンターであった場合は、それは所有者の捨て札置き場に移動し、以降はカードとして扱います)。

相手のカードの上に搭載されていたカードがトラッシュされた場合、その搭載されていたカードは所有者の捨て札置き場へ移動します。

例:搭載中の《パラサイト/Parasite》によって強度が0以下となった《エニグマ/Enigma》がトラッシュされた。《エニグマ/Enigma》はコーポのアーカイブへ移動し、《パラサイト/Parasite》はランナーのヒープへ移動する。

ホストのカードが裏返った場合は、搭載されているカードはトラッシュされません。

インストールされているランナーのカードは、効果によって裏向きになることがあります。その効果が解決された場合も、ホストのカードAと搭載されているカードBとが得ていた関係は維持され、搭載されたままとなります。また、ホストであるコーポのカードAがデレゾされた場合も、やはりそれに搭載されていたカードBとの関係は維持され、搭載されたままとなります。

  • トークンを搭載しているホストが裏返った場合も、そのホストに搭載されているトークンが取り除かれることはありません。

カードAの上にカードBをインストールしたあと、そのBの上に新たなカードCを搭載することができます。そうした場合、カードAとカードCとの間に搭載関係は生まれません。

そのためAはCのホストではなく、また、CはAに搭載されていると見なされません。これにより、Aがホストとなれるカードを制限していたとしても、カードCはその制限に関係なくBの上に搭載できます。ただし、この状態のAがトラッシュされた場合、Bがトラッシュされるため、Cもトラッシュされます(この場合のBとCのトラッシュは妨害できません)。

例:ランナーは《Dinosaurs》に搭載されている《ミミック/Mimic》の上に《個人的接触/The Personal Touch》をインストールした。これにより《ミミック/Mimic》の強度は合計+3される。《Dinosaurs》はアイスブレイカー1つのホストとなることのみ可能なカードであるため、《個人的接触/The Personal Touch》を《Dinosaurs》に搭載することは不可能だが、この場合は《個人的接触/The Personal Touch》を《Dinosaurs》が搭載しているとは見なさない。

  • トークンについても同様です。カードAに搭載されているカードBがウィルスカウンターやパワーカウンターを搭載した場合、それらトークンはカードAに搭載されているとは見なされず、プレイヤーはカードAの能力のためにカードBの上のトークンを使用することができません。

例1が指定する条件があとから逸脱された場合、Bはトラッシュされます。例2の指定する条件は、あとから逸脱されたとしても、Bは影響を受けません。

例:ランナーは《Dinosaurs》に搭載されている《ミミック/Mimic》の上に《調整マトリクス/Adjusted Matrix》を搭載した。これにより《ミミック/Mimic》はサブタイプとしてAIを得る。《Dinosaurs》はAIでないアイスブレイカーのホストにしかなれないため、《ミミック/Mimic》およびその上の《調整マトリクス/Adjusted Matrix》はただちにトラッシュされる(妨害不可)。

例:《パラサイト/Parasite》を搭載している《エニグマ/Enigma》が、《Emergency Shutdown》によってデレゾされた。《パラサイト/Parasite》には「レゾされているアイスの上にのみインストールする。」との指示があるものの、《パラサイト/Parasite》はもはやレゾされていない《エニグマ/Enigma》に搭載されたまま、そしてターン開始時の能力を発動させ続けることとなる。非アクティブのアイスは強度を持たないことから、《エニグマ/Enigma》はレゾされない限りこの先もトラッシュされず、《パラサイト/Parasite》の上のウィルスカウンターはランナーのターン開始時を迎えるたびに増え続ける。

アンドロイド:ネットランナー解説(第2版も対応):迂回/bypassとは

初プレイ中、「迂回ってなんだ?」と思われた方へ。

迂回とは、ざっくりどういう意味?

  • 基本セット(第2版を含む)における迂回とは、ランナーがエンカウントしているアイスの持つサブルーチンや「このアイスにエンカウントした時」の能力を無視して、ただちに通過することです。
    • 基本セット以外のカードを用いて迂回する場合、迂回したランナーが「このアイスにエンカウントした時」の効果を無視できない場合がありますが、これは現状では日本語環境において発生しません。

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サーバーを守っているアイスにエンカウント。でも、ブレイクはたいへんだ!

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迂回しちゃえば、エンカウント時の効果も、サブルーチンも無視。ランは成功!


迂回効果をもたらすカードとは?

  • 基本セットでは、《内部犯行/Inside Job》《ファム・ファタル/Femme Fatale》です(初版と第2版のどちらにも含まれています。)。クリミナルはアイスを迂回するのが得意なようです。なお、《ファム・ファタル/Femme Fatale》で迂回を行う際、アイスブレイカーとしての強度を迂回対象のアイスに合わせて上昇させる必要はないことに気をつけてください。

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迂回について、もう少し詳しく。

  • ランナーがエンカウント中のアイスを通過する手順から説明します。まずそのアイスが「ランナーがこのアイスにエンカウントした時」の発動能力を持っている場合、ランナーはその効果を解決しなければなりません。次にランナーはアイスブレイカーの強度を必要であれば上げ、そしてそのアイスのすべてのサブルーチンをアイスブレイカーによってブレイクするか、もしくは解決する必要があります*1。ですが迂回すれば、これらの一切を行うことなく、エンカウント中のアイスをただちに通過することができます。


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エンカウントしたアイスは《トールブース/Tollbooth》。コードゲートで、強度は5。サブルーチンは「f:id:fobby:20171230005511p:plainランの終了。」が1つ。リグにインストールしてあるデコーダーのアイスブレイカーは《ゴルディアン・ブレード》。さあ、このアイスを通過するぞ!

まず《トールブース/Tollbooth》のエンカウント時の効果を解決するため、ランナーは3f:id:fobby:20171229231623j:plainを払う。次にアイスブレイカーの強度を5にするため、もう3f:id:fobby:20171229231623j:plain払う。最後にアイスブレイカーでサブルーチンを1つブレイクするため、1f:id:fobby:20171229231623j:plainを払う。合計7f:id:fobby:20171229231623j:plainを払って、《トールブース/Tollbooth》を通過!やった!ランの成功!

これが通常のエンカウント時処理です。《ゴルディアン・ブレード/Gordian Blade》は、デコーダーとしてはコストパフォーマンスの高いアイスブレイカーですが、それでもサーバーにランするたび《トールブース/Tollbooth》のために7f:id:fobby:20171229231623j:plain消費するのはなかなかの負担になります。

迂回は、これらの過程すべてを文字通り迂回できるのです!


具体的にどのようなメリットがある?

  • 総じて安上がりです。
  • 《内部犯行/Inside Job》を使うことで、アイスに守られているサーバーに対しアイスブレイカーのない状態でのランが可能となり、コーポに対していわば奇襲を仕掛けることができます。
  • ファム・ファタル/Femme Fatale》でコーポの強力なアイスを選べば、ランナーはクレジットの支出を大きく抑えることができます。ほぼ例外なく、強力なアイスほど高額であるため、コーポがアイスをレゾするために費やしたコストが無駄になることも大きなアドバンテージです。*2
  • 例えば「バリアのアイス」をブレイクするためには「フラクター、もしくはAIのアイスブレイカー」が必要といったふうに、サブタイプの合致するアイスブレイカーが必要となりますが、《内部犯行/Inside Job》も《ファム・ファタル/Femme Fatale》も迂回対象のアイスのサブタイプを問いません。ですから目当てのアイスブレイカーがなかなか引けない場合や、トラッシュされてしまっている場合にも有効です。
  • 迂回を行うことで、《トールブース/Tollbooth》《データレイブン/Data Raven》《ポップアップ・ウィンドウ/Pop-up Window》などが持つ、「ランナーがこのアイスにエンカウントした時」の能力を無視できます。詳細については後述します。

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通過に7f:id:fobby:20171229231623j:plainかかる《トールブース/Tollbooth》も、《内部犯行/Inside Job》なら2f:id:fobby:20171229231623j:plainで迂回!
ファム・ファタル/Femme Fatale》がこの《トールブース/Tollbooth》を選んでいたなら毎回1f:id:fobby:20171229231623j:plainで迂回!
コーポは計算が大きく狂ってしまう。

迂回する際に気をつけることは?

  • 迂回されたアイスのサブルーチンは、ブレイクされていません。
    • 《チャム/Chum》のサブルーチンを解決後、ランナーが次にエンカウントしたアイスを迂回したのであれば、そのランナーは次のアイスのサブルーチンをブレイクしていないと見なされるので、3ネットダメージを受けます。
  • 迂回はあくまでも通過の一種です。
    • 《カクゴ/Kakugo》を迂回したランナーは1ネットダメージを受けます。
  • 基本セットにおけるすべての迂回は「ランナーがこのアイスにエンカウントした時」の能力を無視しますが、英語版の全カードプールを使用する場合は、そうとは限らないことに注意してください。Terminal Directiveのクリミナルのアイスブレイカーは、タイミング構成上、「エンカウント時」の能力を解決してから迂回をもたらします。
  • 迂回と直接関係ありませんが、《ファム・ファタル/Femme Fatale》はインストールコストが9f:id:fobby:20171229231623j:plainと、アイスブレイカーとしては極めて高額です。また、「サブルーチン1つにつき1f:id:fobby:20171229231623j:plain」という迂回コストは、《ハイヴ/Hive》のようなサブルーチンの多さが強みのアイスには効果が薄くなります。

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通過した時、の条件に引っかかってしまう。


「ランナーがこのアイスにエンカウントした時」の能力を、基本セットのカードによる迂回を用いることで無視できる理由を教えてください。

  • 慣れないうちは「そういうものだから」という認識で問題ないと思われます…。初回プレイであれば、この項目は読む必要はありません。(これが最後の項目なので、ブラウザのタブを閉じてしまいましょう)。ゲームに慣れてきて、よりルールを詳しく知りたくなったのなら、恐竜好きの女の子に訊いてみましょう。


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理屈としては、こうです。《ファム・ファタル/Femme Fatale》も《トールブース/Tollbooth》も、「ランナーがアイスにエンカウントした時」というまったく同じタイミングの発動条件を持っているのです。そのため、エンカウントの発生時、《ファム・ファタル/Femme Fatale》の「選んだアイスを迂回する能力」と《トールブース/Tollbooth》の「ランナーに3f:id:fobby:20171229231623j:plainを請求するか、ランを終了させる能力」は、同時に発動条件が満たされます。

ですが効果の解決は常に1枚ずつ、そしてターンを進行しているプレイヤーから順番に行われます。ランやエンカウントは通常であればランナーのターンに発生するため、まずランナーのカードである《ファム・ファタル/Femme Fatale》が持つ「迂回能力」が先に発動するのです。

迂回能力が解決されると、ランナーと《トールブース/Tollbooth》のエンカウントは終了し、ゲームは次のステップへ進んでいます。この時点で《トールブース/Tollbooth》は、もはや「ランナーがトールブースにエンカウントした時」の発動条件を失っています。そのため、3f:id:fobby:20171229231623j:plainを支払わせる効果は発動も解決もしないのです。

長くなりましたが、この処理手順を把握すれば多くのことに応用が効きます。「アンドロイド:ネットランナーでは常に、ターンを進行中のプレイヤーのカードから先に効果を解決する」ということだけでも、覚えておくといいでしょう。

なお、コーポのターンにランを発生させ、《トールブース/Tollbooth》を《ファム・ファタル/Femme Fatale》より優先させうるカードは存在します。存在しますが、ほぼ忘れてしまって問題ないと考えます。もし仮にそのカードを使用された場合は、レアケースゆえにコーポ側から処理について詳しい説明が入るはずです。ベテランのプレイヤーやジャッジでも、コーポのターンのランをよどみなく処理することは困難でしょう。


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《内部犯行/Inside Job》は、《ファム・ファタル/Femme Fatale》とまた違い、さらに専門的な理屈で「このアイスにエンカウントした時」の効果を無視します。「このラン中に最初にエンカウントするアイスを迂回する」という記述には、「~した時」や「~するたび」「各ターン、最初に~したら/した時」などの言葉が使われていません。よって《内部犯行/Inside Job》は常時能力です。

常時能力は、説明に「~した時」や「~するたび」「各ターン、最初に~したら/した時」を用いる条件節能力より常に優先されます。そのため《内部犯行/Inside Job》をプレイ中のランナーが最初に《トールブース/Tollbooth》にエンカウントしたら、「ランナーがトールブースにエンカウントした時」の条件節能力は解決されることなくゲームは次のステップへ進みます。これは、コーポのターンのランであったとしても同様です。

《内部犯行/Inside Job》のメカニズムを把握するのは困難であるばかりか、覚えても他にあまり応用が効きません。「常時能力は、条件節能力より常に優先される」ということだけ覚えておけばよいでしょう。


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なお、繰り返しになりますが、Terminal Directiveに収録されているアイスブレイカーは、「このアイスにエンカウントした時」の能力を無視することができません。これらのアイスブレイカーの持っている迂回をもたらす消費型能力が発動可能になるのは、タイミング構成上、「エンカウントした時」の処理がすべて終了してからとなります。

参考文献

Rule Reference
https://images-cdn.fantasyflightgames.com/filer_public/03/e1/03e12a8e-3d21-4a6a-af2d-5edd99f61c4e/adn_rules_reference_hi.pdf

8ページ:

Bypass
When an effect allows the Runner to “bypass” a piece of ice, they immediately pass that ice and continue the run. All subroutines (including 0) on the ice bypassed are not broken.

以下、拙訳

迂回
ある効果がランナーにアイスを迂回させた時、そのランナーはただちにそのアイスを通過し、ランを続行します。その迂回されたアイスの全てのサブルーチンは、(0個であった場合も含み)ブレイクされていません。

4ページ:

If the trigger condition of a conditional ability is met by a specific timing structure of the game (for example, “When your turn begins...”) and that timing structure becomes invalid between the trigger condition being met and the ability triggering, then the triggered ability never triggers and does not resolve. A timing structure becomes invalidated by that structure ending prematurely, usually due to simultaneous effects or chain reactions.

Example: The Runner encounters a Tollbooth that they can bypass with Femme Fatale. Both cards have the same trigger condition, but because it is the Runner’s turn the Femme Fatale triggers first. The ice is bypassed, and because the encounter timing structure has ended and the pass timing structure has begun, the trigger condition for Tollbooth is no longer valid. The ability to force the Runner to pay credits or end the run does not trigger or resolve.

以下、拙訳

条件節能力の発動条件がゲームの特定のタイミングによって満たされ(例えば、「君のターンの開始時…」)そしてそのタイミングが、発動条件が満たされたことによる能力の発動のあいだに失効した場合、その発動能力は、発動と解決をいっさい行いません。あるタイミングがその途中で終了して失効するのは、通常は同時効果か連鎖効果によるものです。

例:ランナーは《ファム・ファタル/Femme Fatale》によって迂回可能な《トールブース/Tollbooth》にエンカウントした。どちらのカードも同じ発動条件を持つものの、いまはランナーのターンであるがために《ファム・ファタル/Femme Fatale》が先に発動する。そのアイスは迂回され、エンカウントのタイミングが終了。そして通過のタイミングが始まり、《トールブース/Tollbooth》の発動条件はもはや失効する。ランナーにクレジットを支払わせるか、ランを終了させる能力は、発動も解決もしない。


《内部犯行/Inside Job》は常時効果であり、エンカウント時に発動する能力ではないため、コーポのターンであっても迂回できる。
www.reddit.com


余談

FAQ3.xの頃までは、《ファム・ファタル/Femme Fatale》も《トールブース/Tollbooth》も同時に発動するという裁定でしたが、最新のFAQでは《トールブース/Tollbooth》は発動も解決もしないというふうに記述が変わっています。《モウ/Maw》との作用をわかりやすくするための《Salsette Slums》エラッタの影響でしょうか?


公式サイトで読めるpdfを確認する限り、第2版に同梱されているチュートリアルブック、Learn to Playには、迂回に関する記述がいっさいありません!旧ルールブックには迂回についての用語解説があったのに…といっても旧ルールブックも1度改訂されているようで、それまでは迂回に関する記述がなかったのですが。

*1:なお、サブルーチンが例えば2つある場合は、1つはブレイクし、もう1つは解決するといったふうな選択も可能です

*2:まだレゾされていないアイスを選ぶこともできます

アンドロイド:ネットランナー第2版に備え、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のエラッタと裁定の要約

1番下から2番めの「現裁定おさらい」だけをごらんくだされば、要点はお伝えできると思います。
カード名には脚注をつけました。マウスオーバーで、その能力の要約が読めます。

《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》、アンドロイド:ネットランナー第2版に再録

最初に印刷されたのが4年前。ローテーションにより、いわゆる「スタン落ち」を迎える運命のカードでしたが、第2版に再録されたことで当面のあいだ使用が可能となりました。

しかし、いくたびかの裁定変更やエラッタまで行われている厄介なカードでもあります。このカードが第2版に収録されると分かってなお、最新の裁定や正確な挙動をビギナーのために要約した文書が乏しく、これは書き留めておく必要があると感じました。

そもそもアンドロイド:ネットランナーというゲームは裁定が1か月単位で切り替わったりします。しかも、その切り替わりがTwitterでの個人へのリプライという分かりにくい形で表明されることも多いため、プレイヤーは最新の裁定を追跡するのに骨を折ります。

ですが、それも楽しみの一つだと考えます。なにが楽しいのかと思われるかもしれませんが、このテキストをお読みになればお分かりいただけるかもしれません。だらだらとしていますがお付き合いください。

エラッタ

現在印刷されている日本語版の《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は古い記述であり、2016/7月に施行されたエラッタが適用されます。エラッタ後のカードテキストはこのようになっております。

Trace5– If successful, do meat damage to the Runner equal to the number of printed agenda points on agendas he or she stole during his or her last turn.

以下、拙訳

トレース5- 成功した場合、ランナーが直前のターンに盗んだ計画書の表記計画ポイントの合計に等しいミートダメージをそのランナーに与える。

違いは、計画ポイントが「表記計画ポイント/printed agenda points」になっていることのみです。表記計画ポイントというのは「計画書カードの、計画ポイントを表記する欄に書かれている数字」を指します。

例えば、ランナーが1ターンで2枚の《世界食料構想/Global Food Initiative》*1を盗んだら、そのランナーは合計4点の計画ポイントを持つ2枚のカードを得点エリアに置くことになりますが、そのランナーに対しコーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》を用い、表記どおり、合計6点のミートダメージを直後のターン、与えることができるというわけです。

このカードが呼んだいくつかの議論を記録しておきます。


計画書が盗まれていない時にプレイできる?

「Play only if the Runner stole an agenda during his or her last turn.(ランナーが直前のターンに計画書を盗んだ場合のみプレイする)」と書かれていません。では直前のターンに計画書を盗まれていない場合、コーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイできるのでしょうか?


この問題については裁定が一度切り替わっています。初代リードデザイナーのLukasは、「計画書を盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のトレースを仕掛けることはできない」との裁定を2015年8月に下しました。アンドロイド:ネットランナーには、恣意的に要約すると「意味のないことや、解決できないことをしてはいけない。空撃ち禁止」というルールがあるのです。0ダメージを与えることには意味がありません。

ただしこれは《洗浄屋/The Cleaners》*2がコーポの得点エリアにあれば別とされています。計画書が盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》によるダメージは0ですが、《洗浄屋/The Cleaners》はその0に追加の1ミートダメージを加えることができるというのです。

ですが、この裁定は覆されました。そもそも「解決できないことをしてはいけない」というルールには、「意味のないことをすることで、意味のある他の能力が発動して解決されるとしても、それは意味があることとは見なされないのでしてはいけない(意訳)」という文言が含まれています(リファレンスガイド18ページ、「能力の使用」を参照)。

2代目リードデザイナーであるDamonは、「トレースの結果が意味をなさないとしても、トレースそのものには常に状況を変化させる可能性がある(これまた意訳)」との見解を示し、トレースについての裁定を更新。「計画書を盗まれていない場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のトレースを仕掛けることができる」との裁定を下しました。2016年4月のことです。

ancur.wikia.com

The Corp can always play Punitive Counterstrike because it always initiates a trace. But if no other agendas were stolen during the Runner’s turn, Punitive Counterstrike would not do any damage.

以下、拙訳

《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は常にトレースを実行するため、コーポはいつでもそれをプレイできます。ですが直前のターンに他に計画書が盗まれていない場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はいかなるダメージも与えません。

0ダメージを与えるではなく、"would not do any damage."と明文化されたため、《洗浄屋/The Cleaners》が発動しないこともはっきりしました。

まとめ:
《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は、計画書が盗まれていなくてもプレイできる!その場合、トレース成功時には何も起こらない!


盗んだ計画書がランナーの得点エリアから移動していたらどうなる?

ランナーは《データ売人/Data Dealer》*3などの手段を用いることで、盗んだ計画書を放棄し、ゲーム外領域に移動させることができます。また、《ターンテーブル/Turntable》*4を用いることで、盗んだ計画書をコーポの得点エリアの計画書と交換することもできます。

こんな風に、計画書の移動がおこなわれた場合には、どうなるのでしょうか?じつは、この裁定も一度覆されているのです。Lukasは2015年6月に「直前のターンに盗まれた計画書がそのターン中に放棄されるか、もしくは《ターンテーブル/Turn Table》によって移動した場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はダメージを与えない」との裁定を下しました。

2016年2月、これを覆したのはJacob。FFGの公的なサポートによらない非公式FAQを管理するプレイヤーです。非公式とはいうものの、彼の名前は近年のアンドロイド:ネットランナー製品にエディターとしてクレジットされているので、半公式とでも言うべきでしょうか。とにかく、彼の裁定は公式に準ずるか、緊急時にはそれ以上の、重い意味を持ちます。

そのJacobに対し投げかけられたのが、「《Maya》*5が盗んだ《ビール計画/Project Beale》*6をR&Dの一番下に移動させた場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》は2ダメージを与えますか?という質問。これに対しJacobは「はい。盗まれた計画書が得点エリアからコーポの得点エリアでない領域に移動した場合、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はさかのぼってその計画ポイントに等しいダメージを与えます」と答えました。

質問者はさらに、「計画書を放棄した場合の《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》の作用についても明確にしておきたいのですが?」と訪ねます。Jacobは「放棄された計画書も同じです。これは新裁定です。いま非公式FAQサイトの更新に取り掛かっています」と答えました。

まとめ:
盗んだ計画書がランナーの得点エリアにない場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はその計画書の表記計画ポイントをさかのぼり参照できる!


盗んだ計画書の価値が下がっていたらどうなる?

申し訳ないのですがこの件についてわたしには自信がもてません。話半分にお願いします。

2015年3月に公布された、公式FAQ 2.0の記述をごらんください。さきほど紹介した非公式FAQサイトから閲覧可能です。

ancur.wikia.com

What happens if the Runner steals an agenda worth 3 points, and the Corp plays Punitive Counterstrike with The Board rezzed? Does the Runner take 2 or 3 meat damage if the trace is successful?


The Runner would take 2 meat damage if the trace is successful, since the 3 point agenda is currently worth 2 points.

以下、拙訳

ランナーが3点の計画書を盗み、そして《The Board》*7がレゾされてから、コーポが《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイしたらどうなりますか?


3点の計画書の価値が現在は2点となっていることから、トレースが成功した場合、ランナーは2点のミートダメージを受けます。

これがわからない。盗まれた計画書の現在位置を問わず、表記点数に等しいダメージを与えるという裁定と噛み合っていないようにわたしには思えます。移動したことはチェックしないけれど、価値が下がったことはチェックする…。

なお、さきほどの2代目リードデザイナー、Damonの2016年4月の発言は、この質問を受けてのものです。

The Runner steals a copy of Breaking News, Turntables it to the Corp, and then plays Political Graffiti on that Breaking News. Is the Corp allowed to play Punitive Counterstrike on their turn?

以下、拙訳

《臨時ニュース/Breaking News》*8を盗んだランナーが、それを《ターンテーブル/Turntable》でコーポに渡し、そして《Political Graffiti》*9をその《臨時ニュース/Breaking News》に搭載しました。次のターン、コーポは《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》をプレイできますか?

要するに計画書が0点になったらどうなりますか?という質問に、「他に」計画書を盗んでいなければ《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はいかなるダメージも与えないと。なにかおかしいなと思ったのですが、ここで気づいた、2016年4月の発言だから2016年7月のエラッタ前のことじゃないですか!考える必要なし!失礼しました。エラッタの原因は、やはりややこしすぎたということでしょうか。

まとめ:
盗んだ計画書の得点が下がった場合、その下がった点数を参照するというのはもはや使われていない裁定!表記されている点数だけを見てください!


《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》現裁定おさらい

  • 表記計画ポイントをチェックするので、《世界食料構想/Global Food Initiative》は3ミートダメージ、《ビール計画/Project Beale》は2ミートダメージ。
  • 直前のターンに計画書が盗まれていない場合もプレイできる。そうしたなら、トレースが成功した場合、何も起こらない。
  • 0点の計画書(《膠着/Standoff》など)を盗まれた直後のターンでもプレイできる。そうしたなら、トレースが成功した場合、何も起こらない。
    • これらによって、厳密には0点のミートダメージを与えているのかもしれないが、これをもってして「コーポがミートダメージを与えた」あるいは「ランナーがミートダメージを受けた」とは見なさない。そのため、《洗浄屋/The Cleaners》の発動条件は満たされない。
  • 盗まれた計画書が放棄されゲームから取り除かれるか、《ターンテーブル/Turntable》《Maya》などでランナーの得点エリアから離れている場合も、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》はその盗まれた計画書の点数を追跡して参照することができる。
  • 盗まれた計画書の価値が《The Board》や《Political Graffiti》などで下がった場合も、表記されている(下がる前の)計画ポイントをチェックする。

いやあ、第2版に《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》と《洗浄屋/The Cleaners》が併録されると聞いて、混乱が生じる前にこのへんを調べておいてよかった…。こういうふうに最新の裁定を調べるのもこのゲームの醍醐味だと改めて思います。

おまけ:《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》裁定とエラッタの変遷

2014 1月 FFG 《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》の封入されているTrue Colors、発売
2015 6月 Lukas 盗まれた計画書がランナーの得点エリアを離れた場合は0ダメージ(訂正済)
2015年 8月 Lukas 《The Cleaners》がある時のみ、計画書が直前のターンに盗まれていなくてもプレイ可、その場合は1ダメージ(訂正済)
2016 2月 Jacob 盗まれた計画書がランナーの得点エリアを離れた場合も追いかけ、それと同点のダメージを与える
2016 4月 Damon 計画書が盗まれていなくてもプレイ可、また、0点の計画書が盗まれた場合もプレイ可。ただしいずれもダメージを与えたとは見なさない
2016 7月 FFG 《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》、表記計画ポイントだけをチェックするようにエラッタ

*1:表記は3点の計画書だが、ランナーの得点エリアにある間は価値が-1点される

*2:コーポがミートダメージを与えるたび、追加で1点のミートダメージを与える計画書

*3:リソース。1クリック消費、計画書を放棄する:9クレジットを得る。

*4:コンソール。計画書を盗むたび、それをコーポの得点エリアの計画書と交換してよい。

*5:アクセスしたR&Dのカードを、それがたとえ盗んだ計画書であってもR&Dの一番下に加えることができるコンソール。

*6:3アドバンス/2点の計画書だが、余剰の2アドバンスごとに点数が1増える

*7:ランナーの各計画書を-1点するアセット

*8:1点の計画書。

*9:アーカイブへのランが成功した場合、コーポの計画書の上に「この計画書は-1点」と書かれている条件カウンターとして搭載できるイベント