『アンドロイド:ネットランナー』翻訳記事:MWL 2.2発表 - 最後の禁止/制限リスト - Michel Boggs声明
注意:この記事の禁止制限ルール MWL は最新のものではありません。上記タグ「禁止制限改定」をクリックし、最新のものを参照してください。
はじめに
最後の公式MWLが発表されました。これにあわせて(元)リードデザイナーのMichael Boggsから声明が出たため、これを訳しておきたいと思います。
個人で訳したもので、いかなる団体や組織とも関係はありません。
MWLとは
正式にはNAPD Most Wanted List、ニューアンゼルス警察の最重要指名手配リストという意味ですが、要するに『アンドロイド:ネットランナー』の禁止カードと制限カードの一覧です。
禁止のカードは、そのうちのどれも、1枚もデッキに入れることができません。
制限のカードは、1つのデッキにつき、制限されているカードのうち1種類だけ、そのカードの通常のデッキごとの上限枚数(現在はすべて3枚)までデッキに入れることができます。
日本語版MWL
一時期は「日本はカードプールが狭いので、MWLに従う必要はないかもしれない」と考えられていましたが、状況が変わっています。サイクル2つ、大拡張2つが使用できる環境は、Terminal Directiveが使えないことを除けばCache RefreshというFFG公式フォーマットに近いためです。Cache Refreshフォーマットでは、MWLがそのまま適用されます。
そのため、日本語環境でも禁止や制限を有効とすべきと考えます。MWL 2.2入りしたカードのうち日本語化されているものだけをここに記します。
原文
www.fantasyflightgames.com
原文環境も含めたすべての禁止制限はここから飛べるpdfから。
翻訳:ニューアンゼルス警察の最重要指名手配
「わたしたちはニューアンゼルス警察のバッジをつけた全ての人間の背に立っている」
―Chen-Mai Dawn本部長
Android: Magnum Opus*1と、最後のアンドロイド:ネットランナー世界選手権が数週間後に迫っています!
最後のイベントに向けゲームがより組織化プレイへと近づくことをねらい、また、コーポとランナーのさらなる多様性の促進と、そして組織化プレイの完了後であってもプレイ継続に値する健全な環境でゲームを終了させるため、開発者たちは新たなMWLを構築しました。
どのような変更が伴うのでしょうか?開発者Michael Boggs*2に尋ねましょう。
開発者Michael Boggs、Most Wanted Listを語る
こんにちは。
最新のMost Wanted List(MWL)の作成にあたり、わたしたちチームとプレイテスターは新たなチャレンジと向き合いました。これまでのMWLはすべて同じ基幹の指針に基づいていました。メタに潜む問題に取り組み、リスト内容を維持して新規プレイヤーと復帰プレイヤーを迎え入れるというものです。ですが最終版となるこのMWLでは指針をわずかに変更することにしました。
わたしたちはまだリスト内容を維持したいとも思っていたのですが、それよりも、健全で長続きするメタを発展させることがずっと重要だと感じています。その結果、MWL 2.2は今日までのリストで最も積極的なイテレーションとなり、両サイドから多くの制限と除外*3を盛りこんでいます。
ランナーから始めましょう。
制限
《クローンチップ/Clone Chip》は制限リストから外れます。《猛突進/Mad Dash》がその位置に入ります。
《クローンチップ/Clone Chip》:この制限からの解放は、シェイパーという派閥と《フリーダム・クマーロ/Freedom Khumalo》への追い風となり、いずれにも有用なフレキシビリティを提供するでしょう。これは《Clot》の復活も可能とし、《Arella Salvatore》の連鎖コンボと《Titan Transnational》のファスト・アドバンスの遅延化も助け、同時に多様化するアナークIDの選択肢に《フリーダム・クマーロ》を押し上げます。全体としては、《クローンチップ》の制限リストからの解放は、ゲーム全体を通して、ランナー側に喜ばしい研究をうながすはずです。
《猛突進/Mad Dash》:低コストのランのイベントが、ランナーに追加の計画ポイントを与えることは、ほとんどすべてのコーポのデッキのアーキタイプに対し重大な価値を持ちます。《索引付け/Indexing》などのカードと組み合わせると、《猛突進》はすばやくゲームを終了させることができます。そうしたことから、ランナー全般を遅くする手段としての制限入りとなります。
除外
《Hyperdriver》、《火星は火星人の手に/Mars for Martians》、《ゼロ/Zer0》、そして《Tapwrm》 が新たに除外されます。
《Hyperdriver》:1ターンに大量のクリックを消費あるいは乱用するデッキを可能にします。コーポはこのプレイスタイルに対応する手段に乏しく、これは《Hyperdriver》のデッキがより広いメタゲームに有害なネガティブ・プレイ体験*4を持ち込むことを意味します。
《火星は火星人の手に/Mars for Martians》:これを除外することで《Liza Talking Thunder》のタグミー*5を遅くします。タグミーLizaは強いままですが、20以上のクレジットを1クリックで得ることはもうできなくなり、《逆監視/Counter Surveillance》で掘るのがやや難しくなります。
《ゼロ/Zer0》:この除外によってアナークのいちばんホットなカップル、《ゼロ》と《クランの復讐/Clan Vengeance》は破局します。《ゼロ》と《クランの復讐》のいずれもが有力候補として議論されましたが、最終的に《ゼロ》が2つの理由で選ばれました。何よりまず第一に、《ゼロ》より先に《クランの復讐》は環境の片隅に存在していました。成功が困難な作戦の一部とはいえ、うまくいけばエキサイティングでした。第二にアナークは、クレジット獲得、カードのドロー、クリック圧縮といった観点による「経済的可能性」においてすべてのランナー派閥の中で最強と考えて間違いないでしょう。ですから《ゼロ》は、アナークにとって必要のない暴虐的シナジーと経済ブーストを与えていたと言えます。
《Tapwrm》:制限リストから外された《クローンチップ》とのシナジーを一因としますが、さらには、ランナーに多様性のある経済ソリューションを見つけさせるために、《Tapwrm》は除外されます。《Tapwrm》があらゆるデッキの明白な正解というわけではありませんが、それを運用するデッキはしばしばコーポをルーズルーズの状況*6に置きます。
コーポへ!
制限
《Bryan Stinson》、《Jinteki: Potential Unleashed》、《Skorpios Defense Systems》 そして《サーベイヤー/Surveyor》、これらすべては制限下へ。《Violet Level Clearance》は除外から制限へと移動し、《Fairchild 3.0》は制限リストから解放されます。
《Bryan Stinson》:Bryanは数多くの不自然な逆転と戦略の中心です。仮に1ターンであろうとランナーが6クレジット未満に落ち込んだら、Bryanは圧倒的経済優位をコーポに得させ、効率的に、即座にゲームを終了させることが可能です。
《Jinteki: Potential Unleashed》:Jinteki: PUの全体的なプランは、ランナーをサーバーからロックアウトするという、いずれかの陣営にとって全く楽しくないいずれの陣営にとってもまるで楽しくない*7ことを中心に展開します。このプレイスタイルが確固としてゲーム中に存在する限り、Jinteki: PUは高頻度でこれをやってのけます。Jinteki: PUを制限リストに入れることで、ロックアウト型のプレイはまだ可能でありつつも、コーポのプレイヤーはこのIDか、ジンテキの強力なツールである《オボカタ・プロトコル/Obokata Protocol》のどちらを使うか選ばされます。
《Skorpios Defense Systems》Skorpiosが制限される理由は、そのカードパワーのためではありません。最もネガティブ・プレイ体験のもととなりやすいIDの1つであることが理由です。Skorpiosはランナーにまったく何もしないか、もしくはランナーのデッキをめちゃくちゃにするか、そのどちらかであり、中間はありません。Skorpiosとの対戦はしばしばコイントスのように感じられます。Skorpiosの名前を制限リストの《Hunter Seeker》の隣に入れることで、最も悪用されたIDに制約を課しながら、未来のSkorpiosのプレイヤーに新たな戦略の研究をうながすことができるはずです。
《サーベイヤー/Surveyor》:単純に、想定より強いと分かりました。もし影響3か影響4なら制限されなかったかもしれません。実にこれは、「なぜ一般的に、影響コストが高いほうがゲームにとっては良いのか」という教訓です。このままでは、グレイシャー*8風のランに備えたデッキのほとんどすべての高額アイス枠に《サーベイヤー》が採用されます。
《Violet Level Clearance》:当初は《セレブラル・イメージング/Cerebral Imaging》を遅くするため除外されていました。その間、確かに影響はありましたが、想定ほど効果的ではありませんでした。VLCは依然として極めて効率的ではあるものの、そういった理由から除外から制限へ移動します。
《Fairchild 3.0》:《Fairchild 3.0》はとても強力なアイスですが、《サーベイヤー》と同程度とは言えません。《サーベイヤー》が制限リストに加えられたことに伴い、《Fairchild 3.0》を制限から外すことで、グレイシャーを守るために必要なツールを確保します。
除外
《24/7 News Cycle》と《セレブラル・イメージング/Cerebral Imaging》は除外リストに加えられます。《Estelle Moon》と《Museum of History》は制限から除外へと切り替わります。
《24/7 News Cycle》《Estelle Moon》《Museum of History》:これらのカードすべては同一の理由により除外リスト入りとなります:これらがうまく機能すると、限られた手段でしかランナーには介入できない種類のコーポのアドバンテージを導く。そして言うまでもなく、これらのカードはしばしば、実にうまく機能する。
《セレブラル・イメージング/Cerebral Imaging》:《Violet Level Clearance》が除外リストに置かれていたときも、《セレブラル・イメージング》は環境を支配していました。そればかりか、このIDのバランスをとるのは信じられないほど困難です。1つの構築に制約を課すたびに、即座に別のものが飛び出してきます。そうした理由から、わたしたちはCIを競技環境から取り除くと決めました。
終わりに、このコミュニティのために働くのは大変な名誉であったことを申し添えておきたいと思います。情熱的で素晴らしい人々との出会いや対話、そしてプレイテスターとのテストプレイといった、わたしの最高の体験の数々を一言にまとめることはできません。『アンドロイド:ネットランナー』の開発者としての忘れえぬ時間をいただけたことに感謝します。
*2:Boggsの肩書が『アンドロイド:ネットランナー』のLead Designerでなく、Developer(開発者)になっている。記事執筆時点で同開発チームがすでに解体されていることが伺える
*3:removed。MWLでは、使用できないカードをbanned、禁止されたでなく、「除外された」と表現する
*4:negative play experience。NPEと略される。BoggsはHunter Seekerについてもこの語を用いて制限入りの理由を説明した(らしい)
*5:ランナーが自らタグを受けるプレイスタイル
*6:いずれの選択肢を選んでもその結果として敗北する状況。選択肢がそもそも存在しない「詰み」とは意味合いが異なる可能性がある
*7:18/08/24:訂正。
*8:glacier。氷河。強力なアイスをたくさんインストールしてサーバーを守るデッキの総称