アンドロイド:ネットランナー- 公式フォーマット「Cache Refresh」について
「ネットランナーをしたいけど、あいにく40分しか時間がないのでコーポかランナーのどっちか1回しかできないぞ。困ったなあ、自分はコーポをやりたいのだが、相手もコーポをやりたいと言って譲らない」というような時、このルールを応用できるようなできないような…。
Cache Refreshフォーマットとは
カードプールが狭いことと、時間がかからないことが特徴です。これを用いた大会も行われており、NetrunnerDBにはこのフォーマットに基づいたデッキも投稿されています。
1.1.1.1(ワンジーズと読むらしい)というユーザー発の、やはりカードプールが狭い非公式フォーマットが浸透していますが、1.1.1.1もCache Refreshも基本セットや大拡張はそれぞれ1つずつしか使わないので、似ているといえば似ているかも。
特筆すべきは、両プレイヤーはコーポかランナーのどちらかを1回しかプレイしないこと、そして彼らがそのどちらでプレイするかを決める方法です。
使用可能なカード
NAPD Most Wanted List(制限カードと禁止カードにまつわるルール)は通常どおり適用されます。
- アンドロイド:ネットランナー第2版が1つ(計132種)
- 大拡張が1つ(コーポのデッキとランナーのデッキでそれぞれ異なる拡張を使用可)
- 「創造と支配/Creation and Control」「名誉と利潤/Honor and Profit」「Order and Chaos」「Data and Destiny」が該当(すべては55種入り)
- Terminal Directiveが1つ(計57種)
- 1番目に新しいサイクルの拡張すべて
- 2018年2月現在、「統治者の景色/Sovereign Sight」と「白ナイルを下って/Down the White Nile」が該当(計40種)
- 2番目に新しいサイクルの拡張すべて
- 2018年2月現在、「ダイダロス複合施設/Daedalus Complex」「ステーション・ワン/Station One」「地球の末裔/Earth's Scion」「血と水/Blood and Water」「フリー・マーズ/Free Mars」「クリムゾン・ダスト/Crimson Dust」が該当(計120種)
1つと書いてあるので、基本セットに例えば1枚しか入っていないカードを2枚以上デッキに組み込むことはできないと思われます。
このエントリの執筆時、現在のネットランナーでは911種からなるカードプール*1からデッキを構築し対戦を行いますが、Cache Refreshで使用するカードプールは404種から459種で構成されます*2。半分くらいなので、比較的参入しやすいと言えるでしょう。
カードの種類を数え間違えてたらすみません…。
制限時間
40分1ラウンド、1ゲーム。各プレイヤーは1ラウンド中、コーポかランナーのどちらかしかプレイしません。どちらのプレイヤーがどちらでプレイするかを決めるために、次項で説明するCache Refresh独特のルールを用います。
コーポでやるか、ランナーでやるかは競りで決める
まず、両プレイヤーはそれぞれ自分のコーポとランナーのIDカードを公開します。
そうしたのち、最初に入札するプレイヤーをコイントスなどで無作為に決めます。
最初に入札するプレイヤーが決まったら、そのプレイヤーは「コーポでプレイする権利」か「ランナーでプレイする権利」のどちらかを選びます(選ばれなかったほうの権利は、以降は勘案されません)。さらに、そのプレイヤーは選択した権利に対し、次に説明するナンバーで入札を行います。入札が行われたら、今度はそのプレイヤーの対戦相手が入札を行う手番を得ます。
各プレイヤーは交互に、0から10までのナンバーを自由に選んで競り上げていきます。入札するナンバーは、すでに入札されているナンバーより大きくなければいけません。どちらかのプレイヤーが入札せずにパスした場合、もう片方のプレイヤーは入札に勝利し、最初に決定されていた、コーポもしくはランナーでプレイする権利を得ます。
ただし、入札に勝利したプレイヤーは、最後に自分が入札したナンバーに応じて、ゲーム開始時の手札とクレジットが少なくなった状態でプレイを開始します。
- ナンバーが偶数であるなら、
- そのナンバーを2で割った数だけゲーム開始時の手札とクレジットが少なくなります。
- ナンバーが奇数であるなら、
- そのナンバーを2で割り、
- コンマ以下を切り下げた数だけゲーム開始時の手札が少なくなります。
- コンマ以下を切り上げた数だけゲーム開始時のクレジットが少なくなります。
- そのナンバーを2で割り、
信じられないほどややこしいので表
最後に入札したナンバー | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ゲーム開始時の手札枚数 | 5 | 5 | 4 | 4 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 0 |
ゲーム開始時の所持クレ | 5 | 4 | 4 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 |
ゲームが引き分けに終わった場合
開始時の手札とクレジットが少なくなっていること以外はすべて通常どおりのプレイを行いますが、そのゲームが引き分けに終わった場合は、入札に勝ったプレイヤーの敗北となります。
まとめ
カードプールが狭いので参入しやすいのかと思いきや、入札のかけひきが微妙にややこしいし、変則的なスタートになるので上級者向けっぽく見えますね。カードプールの狭い日本語環境でも採用できる可能性のあるルールに見えて、Terminal Directiveが和訳されない(おそらく将来的にも)ということで、やっぱりできません。
ただ、この競りや、初期資源が少ない状態からのゲームは1回はやってみたいですね。1回やったらもういいやってなりそうですけど…。
参考文献
以下、拙訳
Cache Refreshフォーマット
Cache Refreshフォーマットは、アンドロイド:ネットランナーへのもうひとつのランの手段です。このフォーマットでは従来のデッキ構築ルールとNAPD Most Wanted Listを用いますが、カードプールはより限定されます。以下の製品のカードのみ使用可能です。
- 1つの大拡張(各プレイヤーは望むものを1つ選択します。コーポとランナーのデッキそれぞれに異なる拡張を選択できます。)
- 1つのTerminal Directiveキャンペーン拡張*4
- 1番新しいデータ・サイクル*5
- 2番目に新しいデータ・サイクル*6
Cache Refreshイベントの各ラウンドは40分1ゲーム制です。各ラウンド開始時、プレイヤーたちはそのラウンドに誰がランナーやコーポをプレイするかを決定するために、初期クレジットと初期カード数(手札の)を入札に使用します。まず、最初に入札するプレイヤーを無作為に決定します(例えば、コイントスや、サイコロを振るなど)。そのプレイヤーはどちらの側(コーポかランナー)に入札を行うか決定し、最初の入札を行います。各プレイヤーは交互に、ゲーム開始時の資産(初期クレジットとカード)を、1人のプレイヤーが入札を行わずパスするまで徐々に増やしていきます*7。入札時は以下のルールを使用します。
- プレイヤーは0から10までの数字で入札できますが、直前の入札より大きな数字でなければいけません。この数字は、入札したプレイヤーが選択した側でプレイするために犠牲にするゲーム開始時のカード枚数とクレジット額を表します。
- 入札を開始するプレイヤーは0で入札できます。これは通常どおりの初期手札とクレジット額です(いずれも5) 。
- 偶数の数字で入札に勝利した場合、勝利したプレイヤーは入札した数字の半分に等しい数だけ、カードとクレジットを減らしてゲームを開始しなければいけません。奇数の入札が勝利した場合、勝利したプレイヤーはその数字の半分の小数点以下を切り下げただけ初期手札が減り、さらにその数字の半分の小数点以下を切り上げただけ初期クレジットが減ります。例えば、3で入札に勝利したら、ゲーム開始時に2クレジットと1枚のカードがそれぞれ減ります。
ゲームが引き分けに終わった場合、ラウンド開始時に入札に勝利したプレイヤーはゲームに敗北し、そのプレイヤーの対戦相手がゲームに勝利します。
こちらはChache Refreshについてのユーザー発サイト。第2版を使用することや、IDを最初にすべて公開することなどはこっちにしか書かかれていない。
http://www.cache-refresh.info/www.cache-refresh.info
アンドロイド:ネットランナー(第2版対応)- どの派閥でプレイする? - 各派閥の個人的な印象
好きな派閥ってありますか?
これらは個人の感想です
ネットランナーはリビング・カード・ゲーム(LCG)であり、カードパックの購入者すべてが同一のカード群を入手できるため、予算や保管場所などの都合で特定の色のカードだけに絞ってプレイする必要に迫られることが少ないといえます。すべてのプレイヤーは(拡張をすべて購入してさえいれば…)、その時点で強そうな派閥や、楽しそうな派閥で自由にプレイできるのです。
しかしながら、基本セットや第2版を購入したてで、これから少しずつ拡張を買い揃えていくという段階では、一気に全ての拡張を買い揃える気概と予算をお持ちの場合を除くと、たいていは好きな派閥を絞りその派閥にとって強力なカードが入った拡張を少しずつ購入していくことが多いかと思われます。
そんな時、まず好きな派閥が見つけられないということもあるかと思います。そこで、各派閥について、わたしなりのイメージを書き連ねていき、どの派閥を強化していくことからはじめようか迷っている方のお手伝いができたらと思います。
ただ、基本セットあるいは第2版だけでも、じゅうぶんに各派閥の性格は把握可能とも思いますし(この少ないカードプールにも関わらず、ほんとによく個性わけが出来てるものだと驚きます)、さらに、わたしはこのゲームがうまいわけでもなく、しかもここに書かれていることは非常にぼんやりとしたイメージなので、「ここはおかしい」とか「そもそも何の役に立たない」と思われることも多いかと思われます。話半分におつきあいください。
なお、ランナーにはさらに、1つの派閥につき1つのIDしかない、ミニ派閥と呼ばれる3つの派閥がありますが、ここでは省略します。
アナーク
オレンジ。怒りを原動力に、世界が燃え落ちるのを見たいだけの無政府主義者たち。映画『ダークナイト』から説明が引用されているので、つまり、ジョーカーみたいな人たち。
- コーポのカードをトラッシュすることに長けている。
- アーカイブを攻める機会が多い。
- バリア*1に対して強い。
- アイスを通過する以外に、トラッシュすることで対処する。
- 強力なアイスブレイカーに恵まれている。
- 現在、禁止カードに指定されている唯一のアイスブレイカーもアナークのカード。
- カードを派手にドローする。ドローしすぎてヒープに落ちる。
- ヒープのカードを再利用するのが得意。
- リスクとリターンのどちらも極端なカードが多い。
- タグやダメージを自分から受けるカードが多いが、それを逆に利用してパワーアップすることがある。
- クレジットを稼ぐのはそれほど得意ではない。
こんなかたにおすすめ
- 相手の意表を突き、まるでルールの裏をかくような派手な勝ち方がしたい
- 能動的にコーポを攻撃したい
- 尖ったカードの運用方法を考えるのが好き
アナークのカード3選
バリアにエンカウントするたび、ヒープからペーパークリップをインストールしてよい(全てのコストは払う)。
X:強度+X。可能なら、バリアのサブルーチンを最大X個までブレイクする。
トラッシュされても難なくリアニメイトできるほか、あえてディスカードフェイズでこれを捨てて、インストールに要するを節約することもできます。第2の能力は多くの場合、強度さえ合わせればサブルーチンをブレイクするためのコストを踏み倒せるものとして機能します。
おそらく現環境で最強のフラクター*2。アナークは他にもリアニメイト能力を持ったキラー*3やデコーダー*4を持っていますが、その中でもブレイクのためのコストが破格という特性をも併せ持っている《ペーパークリップ/Paperclip》は、アナークに限らず多くの派閥で採用されます。
ちなみに、ネットランナーの能力は、文に追うごとにいわばリアルタイムに解決されていくので、「可能なら、バリアの~」の一文に突入した時点で、すでに《ペーパークリップ/Paperclip》の強度は1+Xに上昇しています。
ハードウェア:コンソール
各ターン、アーカイブ内のものでないカード1枚に最初にアクセスし、それを盗みもトラッシュもしなかった時、コーポはHQのカード1枚をランダムにトラッシュしなければならない。
せっかくアクセスしたコーポのカードなのに、盗みもトラッシュもできなければがっかりですが、《モウ/Maw》はそういった状況をケアすることができます。コーポがアイスに守られていない資財をたくさんインストールしている場合にも有効でしょう。
多くの場合、HQには計画書や、コンボの鍵となる重要なカードが握り込まれています。またコーポは、アーカイブに行ってしまったカードを他のカードの能力なしにHQや場に戻すことができません。
ちなみに、裁定に対して厳密にこれを使うとなると、ランナーはサイコロなど、無作為な数字を出せる道具の持参が必要というやっかいなルールがあるのですが、ほんとにこんなのみなさん守ってるんでしょうか?わたしは守りたくないです……。
イベント:ラン - 破壊活動
ランを行う。このラン中、最初にバリアのサブルーチンを全てブレイクした時、そのバリアをトラッシュする。
同様の条件でセントリーをトラッシュできるイベント、そしてコードゲートをトラッシュできるイベントもアナークにはあるので、これら3つを採用してアイスをどんどんトラッシュしていくのもアナークの得意戦法のひとつです。
アイスをトラッシュされることは、コーポにとっては痛手なばかりか、とにかく腹が立ちます。現在禁止となっているアナークのカードの1つは、アイスのトラッシュを容易に行うことのできる能力を持っていましたが、そのカードは生まれてから禁止されるまで轟々たる非難の的となり続けました。
あれって、強いからというのももちろんですが、アイスがトラッシュされるのはあまりにも腹が立つからというのも嫌われる理由として大きかったと思うんですよね……。
クリミナル
青。アナークと同じ犯罪者だが、クリミナルは純粋に自分たちの利益のために企業の情報を盗み、売りさばく。邪魔な社員の殺害もためらわない。
- HQを攻めることに長けている。
- セントリー*5に対して強い。
- アイスを通過する以外に、迂回やデレゾ*6で対処する。
- コーポのカードを開示するのがうまい。
- この先の環境では、クリミナルの開示が生きてくるかも?
- タグを回避したり取り除くことが得意。
- プロの犯罪者だけに、足がつかないように立ち回ったり、一度身元を割られてもそこから逃げ切るのがうまいということでしょうか。ただ、タグを取り除くのがあまりにも得意すぎた男は禁止カードになりました。
- リソース、わけてもコネの扱いが得意。
- かつてはクレジットをもっとも稼ぎやすい派閥だったが、クレジットを得られるパワーカードが軒並み禁止された現環境では、あながちそうとも言い切れなくなった。
- アイスブレイカーの運用コストが高い。中にはコストの低いものもあるが、そういったものはたいてい使用可能なサーバーが限られていたり、1回しか使えなかったりする。
- 現環境のクリミナルは、AI*7が一気に強くなりました。
- 立て続けの禁止カード指定により使用率がガクッと落ちてしまった。キタラ・サイクルでのテコ入れが待たれる。
こんなかたにおすすめ
- 正面からの心理戦で相手に勝ちたい
- HQアクセスのババ抜き感が好き
- 環境ががらっと変わって評価が落ちてる時こそその派閥を開発してみたい
クリミナルのカード3選
イベント:ラン
HQにランを行う。成功した場合、カードにアクセスするかわりに、コーポはHQ内のカードすべてを2つの裏向きの束に分ける。2つの束のうち1つの束の全てのカードにアクセスし、君はこのランで他の束のいかなるカードにもアクセスできない。
強くて楽しいイベント。HQに計画書が2枚以上あったりした日には、コーポは気が気でなくなります。後述する《Cerebral Imaging: Infinite Frontiers》への強力な対抗策となります。《お決まりのヤツ/Same Old Thing》で何度もプレイしましょう!
ちなみに、束の全てのカードにアクセスするときは、「全て」なんだからとアーカイブの感覚でランナーの任意の順番でアクセス…とやってしまいそうですが、実際は、1枚開いては、計画書なら盗み、トラッシュコストがあるならトラッシュするかどうか決め、なにもしなかったならそれを脇においてまた1枚開き、という手順を踏みます。
プログラム:ウィルス
このターン、中央サーバー1つへのランを成功させた場合のみインストールする。君のターン開始時、コーポのクレジットプールにある5ごとに、1を得る。
コーポがウィルスカウンターを破棄した場合、テープワームをトラッシュする。
《IPO》や《Peace in Our Time》によりコーポがクレジットを抱え込む状況が増えてている現在、このカードも強力です。
ウィルスカウンターの破棄によりトラッシュされたとしても、コーポにを使用させたのなら、それだけで足止めとして充分に役立ったと言えますし、さらに、そこまでしてやりたかったトラッシュをなんらかの手段で妨害できれば、コーポは泣きたくなってしまうでしょう。
プログラム:アイスブレイカー - AI
搭載されているパワーカウンター:アイスのサブルーチンを1つブレイクする。
2:強度+2。
君のターン開始時、Xを支払うことでX個のパワーカウンターをMammonに置いてよい。君のターン終了時、搭載されている全てのパワーカウンターを取り除く。
ブレイクすべきサブルーチンの数を事前に把握できていないと使いづらいという弱点はありますが、それさえケアできればAIとしては破格のコストパフォーマンスを誇ります。
《ファウスト/Faust》の禁止や《アウマクア/Aumakua》の登場とあわせて、AIに関してはクリミナルが強いと言われるようになりました。
シェイパー
ライトグリーン。破壊にもお金にも興味はなく、ただ自分の能力の限界を知るために企業のネットワークに侵入する。
- R&Dを攻めることに長けている。
- コードゲート*8に対して強い。
- ネットダメージに対して強い。
- スタックのカードを探す(サーチする)のが得意。
- アイスを通過する以外に、それを他のアイスと入れ替えたり、別のサブタイプを付与して対処する。
- アイスブレイカーの基本強度を上げたり、別の能力をつけるなど、パワーアップさせるのはこの派閥。
- ハードウェアやプログラムの扱いが得意。
- 1ターンに消費可能なを増やす機会が多い。
- エクストラ・ターンすら得られる。
- 1を倍の価値にするようなカードが多い。
- 次のいずれかを1で行えるようになるカードがそれぞれある。
- 2枚ドロー。
- 1枚ドローして1を得る。
- 2得る。
- インストールしたカードと同じタイプのカードを追加でインストールする。
- イベントをプレイしたら、追加でイベントをプレイする。
- 次のいずれかを1で行えるようになるカードがそれぞれある。
- ステルスのカードを扱うのがうまい。
- 癖がなく使いやすいカードが多いが、反面、尖ったカード、極端にパワフルなカードがあまり回ってこない。どのカードも平均点は高いが、最高点は取れないイメージ。
- 現在、ランナーの制限カード8枚のうちシェイパーのカードは6枚です。
- 一方、ランナーの禁止カード7枚のうちシェイパーのカードは0枚です。ちなみにアナークは4枚、クリミナルは2枚、中立が1枚です。
こんなかたにおすすめ
- リグを拡張していくのが楽しいと感じる
- R&Dを抑え込んで、コーポを封殺したい
- 必ずしも勝利にこだわらず、独特なデッキや戦法を構築したい
シェイパーのカード3選
カード3枚を引く。
なぜこのカードがシェイパーらしいか説明するためには、他の派閥の「カード3枚を引く」効果を持つイベントと比較する必要があります。
アナークの「カード3枚を引くイベント」は《まだましな事態/I've had worse》ですが、これはプレイするために1のコストを要求され、さらに、「このカードがネットダメージやミートダメージを受けトラッシュされるたび、カードを3枚引く」という能力を持っています*9。同じ3枚を引く効果でも、「コストが高い」「ダメージを利用できる」というアナークの個性が表現されているのです。
クリミナルの「カード3枚を引くイベント」は《Fisk Investment Seminar》です。これはコストこそ請求されませんが、「ランナーの最初のとしてのみプレイする」という制限があります。さらに、能力は正確には「コーポとランナーの各プレイヤーはカード3枚を引く」というものです。「HQに干渉する」というクリミナルの個性がこのカードに表現されています。
ひるがえって《ディーゼル/Diesel》を見てみると、コストもなく、制限もなく、カードを引く以外、他に能力もありません。このように、目立った強さはないが、使いやすいのがシェイパーのカードだと思います。
ただし、たまたまドローカードがそうなっているだけで、《R&D Interface》と《HQインターフェース/HQ Interface》は、狙うサーバーが違うこと以外に効果は変わりませんし、《造物主の目/The Maker's Eye》と《地道な作業/Legwork》、あるいは《改良済み/Modded》と《Career Fair》も対象が違うだけで効果は同じなので、この項目は正直こじつけ感があります。
《Levy AR Lab Access》
拙訳
グリップとヒープをスタックに加えてシャッフルする。カードを5枚引く。Levy AR Lab Accessをトラッシュするかわりにゲームから取り除く。
ランナーはスタックが空になったからといって敗北に直接つながることはありませんが、そのことで手詰まりになってしまうことはあります。そこでこのカードの出番です。
長期戦を見据えた場合や、自分のカードをたくさんトラッシュするデッキ、あるいはコーポから頻繁にダメージを受けトラッシュが多発することに備えた場合など、さまざまな状況で出番があります。
その便利さから派閥を問わず高い使用率を誇ったためか、現在は制限カードに指定されています。
イベント
君がこのターン、R&DとHQとアーカイブへのランに成功した場合のみプレイする。
このターンの後、追加のターンを1つ受け取る。
Encoreをトラッシュするかわりにゲームから取り除く。
1ターン内に消費できるクリックを増やすことで複数の《Encore》を同一ターンにプレイでき、プレイした数だけ追加ターンは増えていきます。ランナーが何か悪いことを企んでいる合図です。
頼んでもいないアンコールにこの顔で応えられたら、コーポは怒り心頭でしょう。
ハース=バイオロイド(HB)
紫。アンドロイドや人工知能を開発・販売する巨大企業。おかげで人間は職を奪われる一方。女性CEOのドラ息子は、ランナーに誘拐されたことがある。
- を増やしやすい。
- アーカイブのカードを再利用するのが好き。
- ブレインダメージを与えるのがうまい。
- HB固有のバイオロイドのアイスは、ランナーのでサブルーチンをブレイクされる見返りとしてか、やや性能が高めに設定されている。また、バイオロイドを強化するカードも多い。
- 現在、アイスとして唯一制限カードに指定されているのも、バイオロイド。かつて制限されていたのもバイオロイド。
- バイオロイドでないアイスも優秀。
- HBはかつてアイスが2つ制限されていました。片方はバイオロイド、もう片方は非バイオロイド。歴史上3枚のアイスが制限入りしたことがあるのですが、すべてHBのアイスです。
- ドローとともにクレジットを増やすクリアランス/Clearanceの名前を持つ任務が多い。
- 禁止や制限で狙い撃ちにされた感があるが、まだまだ強い。
こんなかたにおすすめ
- 計画書を得点することで勝ちたい
- たくさんのアイスや強化に守られている堅牢なサーバーを作りたい
- 「HBならフラットラインは狙わないだろう」と油断した相手をびっくりさせたい
HBのカード3選
《Cerebral Imaging: Infinite Frontiers》
拙訳
ID:部署
君の手札上限は、君のクレジットプール内のクレジットの額に等しい。
クレジットを稼ぐごとにどんどんHQを拡大します。手札が多くなることで幅広い行動選択肢や強力なコンボを得られるほか、HQはR&Dと違って「掘る」ことができないため、守りにも秀でています。2017年世界チャンプも《Cerebral Imaging》を使用していました。このIDを強化するカードがたくさんプールに加わったほか、先述したようにクリミナルが減少したことが追い風となっています。
開発責任者の発言から、今後は制限か禁止の措置を取られるのではないかともささやかれていますが、果たして…。
任務:取引 - Triple
この任務をプレイするための追加コストとして、を消費する。
10を得てカードを4枚引く。カード1枚をインストールする(全てのコストは払う)。
プレイコストとの差し引きで4を得て4枚を引くという、まさに《Cerebral Imaging》のためにあるようなカード。どんどんHQが広がっていきます。
ちなみにカードのインストールは「してよい」ではないため、インストール可能なカードがHQにある場合は必ず何かインストールしなければなりません。インストール可能なカードがHQになければしなくていいですのが、そのことをどうやってランナーに証明して納得させるのかという問題があります。もし物言いが出ればジャッジにHQの確認を頼むしかないので、「してよい」にエラッタしてほしい…。
計画書:構想
Elective Upgradeを得点した時、その上に計画カウンターを2つ置く。
, 搭載されている計画カウンター:を得る。この能力は1ターンに1度だけ使える。
言ってみれば、2つの《人造労働者/Biotic Labor》が無料で使用できるようなものです。これを得点した時点でほぼコーポの勝ちが決まってしまっているのではないかというくらい、非常に強力な計画書です。
ジンテキ
赤。労働力としてのクローン販売のほか、医療、農業、食品などの産業に携わる日本企業。超能力の研究をしているとのウワサあり。都合が悪くなると社員を切腹させ事態の解決を図ることも。
- ネットダメージを与えるのがうまい。
- ジンテキといえばネットダメージ。グリップのカードを落とし、じわじわとランナーを苦しめます。
- アクセスしたランナーを攻撃する待ち伏せ/Ambushが多い。
- 癖のあるカードがコーポの中ではダントツに多い。
- サイ/Psi*10でランナーを翻弄する
- 計画書ですら意地悪な能力が多く、ランナーはアクセスしても盗むのに一苦労。
- よく言えば心理戦、悪く言えば運ゲーにランナーを巻き込むことができる。
- アイスのレゾコストが高いうえ、「ランの終了。」を持つものが少ない。
- サブルーチンの効果も独特なものが多い。
- ラン中のランナーを違うサーバーに飛ばすのが得意。
- R&Dを操作するカードが多い。
- これにより、一番上のカードを待ち伏せ/Ambushに入れ替えたりできる。
- 一度インストールしたアイスの位置を入れ替えるのも好き。
- 全体的にカードのコストが高い。
- 3/2の計画書*11がジンテキだけあまり強くない。
こんなかたにおすすめ
- 一気に勝つのではなく、ジワジワと相手を追い詰めたい
- 海外産SFやゲームにありがちな、奇妙な日本観が好き
- じゃんけんやババ抜きが得意
ジンテキのカード3選
アイス:バリア - 対人
ランナーがカクゴを通過した時、1ネットダメージを与える。
ランの終了。
ランナーがサブルーチンをブレイクしても、迂回しても1ネットダメージを与えるので、じわじわとランナーを苦しめます。「ランの終了。」を持つアイスとして使えることも評価を高めます。
これが発売されたのは《Şifr》+《パラサイト/Parasite》によるコンボの全盛期。「強度1のアイスが《パラサイト》の前に何の役に立つんだ」とのリプが公式Twitterに飛びました。
《オボカタ・プロトコル/Obokata Protocol》
拙訳
計画書:待ち伏せ
オボカタ・プロトコルを盗むための追加コストとして、ランナーは4ネットダメージを受けなければならない。
制限カードの計画書。4ネットダメージはコストなので妨害できず、必ず受けなければいけません(受けたくないのであれば、盗むことを拒否できる)。ランナーがこの効果を受け流して計画書を入手するには、制限カードの《Film Critic》を使うしかありません。
効果もさることながら、実在の人物をモチーフにしていると思われるネーミングは、Redditでもしばしば話題になります。
計画書:構想 - サイ
ランナーがThe Future Perfectにアクセスした時、君とランナーは秘密裏に0か1か2を払う。支払ったクレジットを公開する。君とランナーが異なる金額を支払っていた場合、The Future Perfectが盗まれるのを妨害する。この能力は、ランナーがインストール状態のThe Future Perfectにアクセスした場合、無視する。
中央サーバーにある限り2/3の確率で盗めないので、守りに優れた計画書です。ただ、サイゲームを繰り返すうちにクレジットがだんだんなくなってしまうことに気をつけてください。これを得点するためにインストールすると、能力を失うことにも注意が必要です。
《The Future Perfect》と《オボカタ・プロトコル》を3枚ずつデッキに入れれば合計18点なので、これにもう2点入ればコーポの45~49枚デッキに必要な20点の計画ポイントの要件を満たすことができます。計画書の枚数を減らせば防御力を高めることができ、また計画書自身の自衛能力も高いので、《The Future Perfect》と《オボカタ・プロトコル》を3枚ずつというのは、ジンテキのデッキによく見かける構成です。
NBN
黄。マスメディア、広告、映像コンテンツ業界を牛耳るコングロマリット。この会社に個人情報を登録しないと実質的に生活できない時代となっている。個人情報は適切に使用されており、自分たちは邪悪ではないと主張しているが…
- タグをつけるのがうまい。
- 情報ネットワークを生かしてランナーの身元を掴むのがうまいということでしょうか。
- タグされているランナーにえげつない効果を与えるカードも多い。
- トレースを仕掛ける機会が多い。
- アイスの性能は高い。特に低コスト帯は優秀。
- エンカウント時に能力が発動するアイスが多い。
- 持っているのはエンカウント時の能力だけで、サブルーチンが1つもないアイスすらある。
- ドローするのが得意。
- ランナーのクレジットを失わせるのもなかなか得意。
- ウェイランドのカードを使うのがウェイランドよりうまいと言われることがある。
- 1点や2点の計画書は優秀なのだが、3点の計画書は使い所が限られるものが多い。
- 実質禁止の計画書がNBNから2枚出ました(1点と2点)。
- アクセスされた時に能力が発動する計画書も多い。
こんなかたにおすすめ
- タグをつけられて思うように身動きできなくした相手を追い詰めたい
- 早い段階から勝負に出たい
- 情報の管理により大衆の心理を支配している巨大マスメディアという構造が好き
NBNのカード3選
《NBN:メッセージの支配/NBN: Controlling the Message》
拙訳
ID:メガコーポ
各ターン、ランナーがコーポのインストール状態のカードを最初にトラッシュした時、「トレース4- 成功した場合、ランナーに1タグを与える(回避できない)」をしてよい。
通称「CtM」。トラッシュコストに2,が上乗せされるようなものですから、資財をばらまく「資財スパム戦法」と相性抜群の、強力なIDです。2016年世界大会では、ベスト16のうち9人がこのIDを採用していました。
なぜこのタグは回避できないんでしょうか。この直前に追加されたシェイパーのIDは、ラン中のタグを回避する能力を持っていたのですが、CtMにはしごをはずされてしまいました。
《強烈なニュース/Hard-hitting News》
拙訳
任務:最終
この任務を解決後、君のアクションフェイズを終える。
ランナーが直前のターンにランを行っていた場合のみプレイする。
トレース4- 成功した場合、ランナーに4タグを与える。
トレースが成功したら、ランナー側にタグを回避したり取り除く効果がない場合、次のターンのランナーから8とを失わせる恐ろしいカードです。もしそれらがなければ、ランナーはタグを受けたままコーポにターンを回すはめになります。そうなったら…。
この任務をいつプレイされてもいいよう、ランナーはできるだけ8を確保した状態を維持しておきたいところ。しかし、NBNはランナーのクレジットを失わせることにも長けているので…
資財:Cast
各ターン、最初にカード1枚を引いた時、追加でカード1枚を引く。引いたカードのうちの1枚をR&Dの一番下に加える。
要するにコーポの強制ドローが2枚になります。うち1枚は戻すので、HQが不要なカードであふれる恐れもありません。純粋にドローの質を高めることができます。トラッシュコストも高め。
R&Dの一番上と上から2枚目の、どちらをHQに加えどちらをR&Dに戻したかをランナーに伝える義務はコーポにありません。コーポは引いたカードをシャッフルして、その情報を隠すことができます。
この資財があればあるだけ、引くカードと戻すカードは増えます。《Daily Business Show》が2枚なら、強制ドローは3枚になり、戻すのは2枚に。《Daily Business Show》が3枚なら、強制ドローは4枚になり、戻すのは3枚です。複数のカードをR&Dの一番下に加える時は、それらを任意の順番に並べ替えてから加えることができます。
ウェイランド・コンソーシアム
ダークグリーン。建設と宇宙開発を軸に、莫大な資産による企業買収を繰り返し成長を続けるメガコーポ。強引な開発や相次ぐ関係者の不審死により、黒い噂がたえない。
- ミートダメージを与えるのがうまい。
- ウェイランドといえばミートダメージ。一気にランナーをフラットラインさせ、勝利を狙うことができます。
- 総じてアイスのスタッツは高いが、レゾコストも高め。さらに、後述するように、計画書の放棄や悪名の授与、アドバンスなど、クレジット以外のものを要求されるアイスも多い。
- R&Dからサーチするのが得意。
- ウェイランド固有の、アドバンス可能なアイスを持つ。
- 表向きにインストールする計画書を持つ。
- 使用するための追加コストとして、得点済みの計画書の放棄を必要とするカードがある。
- 自分から悪名を得ることが多い。
- 状況にもよるが、悪名はランナーにもたらす利益がとても大きく、そしてカードの効果がなくては取り除くことができない。
- ファストアドバンスらしいファストアドバンスを持たない。3/2の計画書をインストールしたターンに得点する手段に乏しい。
- ウェイランドのカードは、ウェイランドのデッキで見かけることより他の派閥のデッキに入っているのを見かけることのほうが多いので、ウェイランドは全体としてはあまり強くないのではないかと感じてしまう。
こんなかたにおすすめ
- 一気にカタをつけるのが好き
- いわゆるファッティなスタッツのアイスがお好きな方へ。あるいは、アイスはランナーに通行料を課すものでなく、ランを終了させるものであるべきで、そのためなら金はいくらでも出すし汚名も受けるという思想のかた
- 敵対的買収を繰り返したり、立ち退きもまだなのに土地の再開発を強行したり、すぐ暗殺で解決しようとしたりするブラックなメガコーポ描写が好き
ウェイランドのカード3選
任務:ダブル - 違法
ランナーが最低2タグ所有している場合のみプレイする。
この任務をプレイするための追加コストとして、を消費する。
7ミートダメージを与える。
ウェイランドといえばやはりこれ!ランナーを一発でフラットラインさせる可能性のあるカードです。ミートダメージを手軽に防げたカードが「スタン落ち」したため、奇襲としては価値が上がっています。
また、これを使用することを警戒させて、ランナーの行動を制限できるのも強みです。仮にデッキに《BOOM!》が入っていなくとも、ランナーはウェイランドやNBNとの対戦ではこのカードを常に意識せざるを得ません。
ただ、ウェイランドのカードだけではランナーに2タグ与えるのが難しいので、NBNのカードを入れてフォローしましょう。
強化:人物
ランナーが6未満しか所有していないあいだ、Bryan Stinsonは「:アーカイブにある取引の任務1つを、全てのコストを無視してプレイする。その取引をトラッシュするかわりにゲームから取り除く。」を得る。」
なんなんでしょうかこのカードは?強化であるためR&DやHQ、得点用の遠隔サーバーといった守りの固いサーバーに便乗してインストールしてしまって問題ありません。ランナーが6未満の状態でコーポにターンを渡したが最後、わずか2でレゾされ、アーカイブの《ヘッジファンド/Hedge Fund》のコストを踏み倒して9に換えてしまいます。
追加コストも無視されるため、さきほど紹介した《Ultraviolet Clearance》は
- 「6,:10得て4枚カードを引く。カードを1枚インストールする。」
から
- 「:10得て4枚カードを引く。カードを1枚インストールする。」
このように変貌します。
彼によってコーポが20や30を1ターンで得ることはザラで、トラッシュコストも5と高額です。
しいて弱点をあげるとしたら、ランナーがしまり屋で6以上つねに保有しているのであれば《Bryan Stinson》は何もできないということでしょうか。
任務:ダブル - 触法
この任務をプレイするための追加コストとして、を消費する。
ランナーが直前のターンに計画書を盗んでいた場合のみプレイする。
カード1枚をトラッシュする。
制限カードの1枚です。うかつにウェイランドの計画書を盗んでしまうと、タグやトレースといった手続きもなく、タイプを問わずにインストール状態のカードを1枚トラッシュされてしまいます。
ウェイランドには「トラッシュされたカードをゲームから取り除く」というIDもあり、1枚しかないアイスブレイカーをゲームから取り除かれ、そのまま投了するしかないという事態に陥ることも。
《オボカタ・プロトコル》と並んで、計画書を盗むことにランナーは多大なリスクを負うという環境を形成したカードであり、多くのランナーが制限カードの中から《Film Critic》*12を採用する原因となりました。
まとめ
ネットランナーって中立カードも強いし、IDと計画書以外のカードは影響コストを払えば別の派閥で普通に活躍できるし、派閥で区切る意味がそこまでないかなあ…と書いていて思いました。ここまでつきあわせてなんだその結論は。
質問箱
Fobbyの質問箱です | Peing -質問箱-
アンドロイド:ネットランナーのルールについてご相談なさりたいことがあればお気軽にお願いします。また、このブログのエラーなどお気づきの際はお教えいただけるとたいへん助かります。
*1:アイスのサブタイプの1つ
*3:セントリーをブレイク可
*4:コードゲートをブレイク可
*5:アイスのサブタイプの1つ
*6:非レゾ状態に戻すこと
*8:アイスのサブタイプの1つ
*9:余談ですが、この能力が発動してカードを引くことはイベントをプレイすることではないので、プレイコストは不要です
*10:コーポとランナーが秘密裏に0か1か2クレジットを支払い、額が異なっていた場合にのみ効果が発動する能力を持つカード。最近、額が同一でも何らかの効果を与えるバリエーションが出てきた
*11:アドバンス要求が3、計画ポイントが2であることをこのように表記します
*12:早い話、アクセスした計画書を盗まず(アクセス時の効果も無視)、ただランナーの得点エリアに加えるコネ
アンドロイド:ネットランナー - 《アウマクア》の「1枚以上のカードにアクセス」ってどういう意味?
Twitterで《アウマクア/Aumakua》についてやりとりさせていただいたのですが、なるほど、同様の疑問を抱く方は他にもおられるかもしれないと思いまして、今回エントリにさせていただきます。
1枚以上?
まず《アウマクア》の記述を以下に引用します。
君がカードを開示するか、1枚以上のカードにアクセスしてそのどれも盗みもトラッシュもしないたび、アウマクアの上にウィルスカウンターを1個置く。
ここから「1度のランで複数のカードにアクセスした場合、その数だけ《アウマクア》にカウンターが載るのか?」という疑問を抱かれた方がおられました。
た、確かにそうとも読める…!「1枚」だって「1枚以上」ですからね。ですが、ルールとしては違います。《アウマクア》はちょっと特殊なので、以下のことを丸暗記してしまってください。
1度のアクセスフェイズにつき《アウマクア》に載るカウンターは1個まで
見出しに書いてしまいましたが、とにかく、1度のランでアクセスフェイズは1度しか発生しないため、1度のランで何枚にアクセスしても、《アウマクア》に載るカウンターは1個です。
また、中央サーバーは空の状態でも常に存在し、アクセス可能です。そのため、空のアーカイブにランを行っても、《アウマクア》にカウンターが乗ります。HQやR&Dが空である場合も同様です。
裁定によれば、《アウマクア》は、アクセスフェイズ全体をチェックします。少し踏み込んでみましょう。
アクセスフェイズのタイミング構成
アクセスフェイズとは、ランが成功した後に行う以下の手順のことです。リファレンスガイド(ArclightGames)の26ページ、ランのタイミング構成より、アクセスフェイズに相当する箇所を引用します。
[5.5]カードにアクセスします。アクセスするカードの枚数を決定します。アクセスするカード 1 枚につき、
[5.5.1]そのカードにアクセスします(「アクセス時」条件節の発動条件発生)
[5.5.2]ランナーは可能なら、そのカードをそれのトラッシュコストを支払うか能力によりトラッシュできます。
[5.5.3]そのカードが計画書なら、ランナーはそれを盗みます。
[5.5.4]カードがトラッシュされず盗まれなかった場合、それを脇に置きます。
[5.6]アクセスして脇に置かれたすべてのカードを、元の状態でサーバーに戻します。そのまま[6]へ。
はい!この工程をすべて終えた時、盗みやトラッシュが一度も発生していない場合、《アウマクア》にウィルスカウンターを1つ載せます。
このことから、カードに1枚もアクセスしていない以下の3例においても、《アウマクア》にウィルスカウンターが載ります。
- ランナーは空のHQに向かってランを行った。HQのルートに強化もない。ランは成功した。
- ランナーは《Eater》を使用した。そのため、このランの最中、ランナーがアクセス可能なカードは0枚となってしまう。ランが成功する。
- ランナーは遠隔サーバーの《アッシュ2X3ZB9CY/Ash 2X3ZB9CY》に《クイーンズ・ギャンビット/Queen's Gambit》を使ったあと、その遠隔サーバーにランを行い、ランが成功する。そうしたのち、トレースにコーポが勝った。
いずれの例も、ランナーはカードに1枚もアクセスすることはありませんが、アクセスフェイズは発生します!だって、タイミング構成の[5.5]に到達して、「アクセスするカードの枚数を決定します。」の手順も踏めるんですから(0枚と)。そして、アクセスフェイズ中にトラッシュも盗みも行っていない(というか、できない)ので、《アウマクア》にカウンターが載ります。
「カードにアクセスするたび」
実は、英語版テキストを読むと割とすんなり《アウマクア》の発動条件がわかります。英語といっても極めて限定された文法と単語しか使用されない「ネットランナー語」とでもいうべきものなので、わたしでも1分あればカード1枚のテキストを完読できます。
Whenever you expose a card or access cards and do not steal or trash any of them,
このaccess cardsを覚えておいてください。
話が飛ぶようですが《HQインターフェース》を見てみましょう。これは「HQのカードにアクセスするたび」発動すると書かれている能力ですが、気をつけてください。「HQのカード1枚にアクセスするたび」発動する能力ではありません!だってさっきのタイミング構成を見てください。ランナーがアクセスするカードの枚数は、カードに実際にアクセスする前に決定されるんですから、特定のカードにアクセスしてしまってはもうアクセス数を追加できません。実はこれも英文をみたほうが分かりやすいんです。《HQ Interface》の原文がこちら。
Whenever you access cards from HQ
またaccess cardsですね。では、アクセスフェイズのタイミング構成を英語で見てみます。
[5.5] Access cards.
そうなんです。カードテキストのwhenever you access cardsは、常にこのタイミング構成[5.5]に到達することを指しているんです!なので、もう一度アクセスフェイズのタイミング構成表を見ていただければおわかりのように、《アウマクア》はアクセスフェイズに1度しかない[5.5]が絡まないと発動しないのです。[5.5.1]はaccess that card(単数)なので、特定のカード1枚に実際にアクセスすることを指します。これは《アウマクア》とは関係がありません!
おもしろいことに「カードにアクセスするたび」と「1枚以上のカードにアクセスするたび」は、同じ言葉を訳したものなんです。日本語には複数形がないので、このようなことになっていると思われます。
日本語版は、ランのタイミング構成[5.5]に到達すること(whenever you access cards)も、1枚のカードにアクセスすること(whenever you access a card)も、どっちも「カードにアクセスする」と表現することがあるので、実際どちらなのかは文脈から判断します。
微妙に発動条件が違うカードとの見分け方
君がアーカイブ以外でトラッシュコストのあるカードにアクセスしてそれをトラッシュしないたび
Whenever you access a card with a trash cost not in Archives and do not trash it,
これは《アイネアスの密告者》ですが、この場合の「カードにアクセス」は、1枚のカードにアクセスすることを指しています。「トラッシュコストがあるカード」と特定されていることから、カードは単数だと判断できます。
君がカードを開示するか、1枚以上のカードにアクセスしてそのどれも盗みもトラッシュもしないたび
Whenever you expose a card or access cards and do not steal or trash any of them,
《アウマクア》ですね。「1枚以上」「そのどれも」という表現に着目します。何枚にアクセスしても「1枚以上」であることや、「そのどれも盗みもトラッシュもしない」という記述から、これはマルチアクセスや強化へのアクセスを含んだアクセスフェイズを経て、ということがわかります。
各ターン、君が最初にアーカイブ以外のカードにアクセスしてそれを盗みもトラッシュもしなかった時
The first time each turn you access a card not in Archives and do not steal or trash it
これは《モウ》ですが、この場合の「カードにアクセス」も、1枚にアクセスすることを指しています。これはちょっと難しいですね…。やはり「それを」が鍵でしょうか。「そのどれも」でないことから1枚と特定するということになりそうですが、それを理解するためには《アウマクア》が複数だということを把握してないとダメで、いくら同時に発売されたとはいえ、《アウマクア》も買って読んでさらに理解できていないと混乱するというと、なんだかちょっと循環論法みたいな…
とにかく、《モウ/Maw》と《アイネアスの密告者/Aeneas Informant》は、カード1枚にアクセスして、それをトラッシュも盗みもしなかった時に発動します。特に《アイネアスの密告者》は、いちどにたくさんのカードにアクセスすればするほど、それだけ効果を得られるカードなので、《アウマクア》との混同に気をつけてください。
みもふたもない結論
ここらへんのテキスト中のカードがa cardなのかcardsなのかは、NetrunnerDBで読める英語版カードテキストで確認しましょう…。whenever you access cardsと来たら、あるカード1枚にアクセスするたび…ではなく、ランのタイミング構成[5.5]に到達するたび、という意味です。
質問箱
Fobbyの質問箱です | Peing -質問箱-
アンドロイド:ネットランナーのルールについてご相談なさりたいことがあればお気軽にお願いします。また、このブログのエラーなどお気づきの際はお教えいただけるとたいへん助かります。