アンドロイド:ネットランナー - 《アウマクア》の「1枚以上のカードにアクセス」ってどういう意味?
Twitterで《アウマクア/Aumakua》についてやりとりさせていただいたのですが、なるほど、同様の疑問を抱く方は他にもおられるかもしれないと思いまして、今回エントリにさせていただきます。
1枚以上?
まず《アウマクア》の記述を以下に引用します。
君がカードを開示するか、1枚以上のカードにアクセスしてそのどれも盗みもトラッシュもしないたび、アウマクアの上にウィルスカウンターを1個置く。
ここから「1度のランで複数のカードにアクセスした場合、その数だけ《アウマクア》にカウンターが載るのか?」という疑問を抱かれた方がおられました。
た、確かにそうとも読める…!「1枚」だって「1枚以上」ですからね。ですが、ルールとしては違います。《アウマクア》はちょっと特殊なので、以下のことを丸暗記してしまってください。
1度のアクセスフェイズにつき《アウマクア》に載るカウンターは1個まで
見出しに書いてしまいましたが、とにかく、1度のランでアクセスフェイズは1度しか発生しないため、1度のランで何枚にアクセスしても、《アウマクア》に載るカウンターは1個です。
また、中央サーバーは空の状態でも常に存在し、アクセス可能です。そのため、空のアーカイブにランを行っても、《アウマクア》にカウンターが乗ります。HQやR&Dが空である場合も同様です。
裁定によれば、《アウマクア》は、アクセスフェイズ全体をチェックします。少し踏み込んでみましょう。
アクセスフェイズのタイミング構成
アクセスフェイズとは、ランが成功した後に行う以下の手順のことです。リファレンスガイド(ArclightGames)の26ページ、ランのタイミング構成より、アクセスフェイズに相当する箇所を引用します。
[5.5]カードにアクセスします。アクセスするカードの枚数を決定します。アクセスするカード 1 枚につき、
[5.5.1]そのカードにアクセスします(「アクセス時」条件節の発動条件発生)
[5.5.2]ランナーは可能なら、そのカードをそれのトラッシュコストを支払うか能力によりトラッシュできます。
[5.5.3]そのカードが計画書なら、ランナーはそれを盗みます。
[5.5.4]カードがトラッシュされず盗まれなかった場合、それを脇に置きます。
[5.6]アクセスして脇に置かれたすべてのカードを、元の状態でサーバーに戻します。そのまま[6]へ。
はい!この工程をすべて終えた時、盗みやトラッシュが一度も発生していない場合、《アウマクア》にウィルスカウンターを1つ載せます。
このことから、カードに1枚もアクセスしていない以下の3例においても、《アウマクア》にウィルスカウンターが載ります。
- ランナーは空のHQに向かってランを行った。HQのルートに強化もない。ランは成功した。
- ランナーは《Eater》を使用した。そのため、このランの最中、ランナーがアクセス可能なカードは0枚となってしまう。ランが成功する。
- ランナーは遠隔サーバーの《アッシュ2X3ZB9CY/Ash 2X3ZB9CY》に《クイーンズ・ギャンビット/Queen's Gambit》を使ったあと、その遠隔サーバーにランを行い、ランが成功する。そうしたのち、トレースにコーポが勝った。
いずれの例も、ランナーはカードに1枚もアクセスすることはありませんが、アクセスフェイズは発生します!だって、タイミング構成の[5.5]に到達して、「アクセスするカードの枚数を決定します。」の手順も踏めるんですから(0枚と)。そして、アクセスフェイズ中にトラッシュも盗みも行っていない(というか、できない)ので、《アウマクア》にカウンターが載ります。
「カードにアクセスするたび」
実は、英語版テキストを読むと割とすんなり《アウマクア》の発動条件がわかります。英語といっても極めて限定された文法と単語しか使用されない「ネットランナー語」とでもいうべきものなので、わたしでも1分あればカード1枚のテキストを完読できます。
Whenever you expose a card or access cards and do not steal or trash any of them,
このaccess cardsを覚えておいてください。
話が飛ぶようですが《HQインターフェース》を見てみましょう。これは「HQのカードにアクセスするたび」発動すると書かれている能力ですが、気をつけてください。「HQのカード1枚にアクセスするたび」発動する能力ではありません!だってさっきのタイミング構成を見てください。ランナーがアクセスするカードの枚数は、カードに実際にアクセスする前に決定されるんですから、特定のカードにアクセスしてしまってはもうアクセス数を追加できません。実はこれも英文をみたほうが分かりやすいんです。《HQ Interface》の原文がこちら。
Whenever you access cards from HQ
またaccess cardsですね。では、アクセスフェイズのタイミング構成を英語で見てみます。
[5.5] Access cards.
そうなんです。カードテキストのwhenever you access cardsは、常にこのタイミング構成[5.5]に到達することを指しているんです!なので、もう一度アクセスフェイズのタイミング構成表を見ていただければおわかりのように、《アウマクア》はアクセスフェイズに1度しかない[5.5]が絡まないと発動しないのです。[5.5.1]はaccess that card(単数)なので、特定のカード1枚に実際にアクセスすることを指します。これは《アウマクア》とは関係がありません!
おもしろいことに「カードにアクセスするたび」と「1枚以上のカードにアクセスするたび」は、同じ言葉を訳したものなんです。日本語には複数形がないので、このようなことになっていると思われます。
日本語版は、ランのタイミング構成[5.5]に到達すること(whenever you access cards)も、1枚のカードにアクセスすること(whenever you access a card)も、どっちも「カードにアクセスする」と表現することがあるので、実際どちらなのかは文脈から判断します。
微妙に発動条件が違うカードとの見分け方
君がアーカイブ以外でトラッシュコストのあるカードにアクセスしてそれをトラッシュしないたび
Whenever you access a card with a trash cost not in Archives and do not trash it,
これは《アイネアスの密告者》ですが、この場合の「カードにアクセス」は、1枚のカードにアクセスすることを指しています。「トラッシュコストがあるカード」と特定されていることから、カードは単数だと判断できます。
君がカードを開示するか、1枚以上のカードにアクセスしてそのどれも盗みもトラッシュもしないたび
Whenever you expose a card or access cards and do not steal or trash any of them,
《アウマクア》ですね。「1枚以上」「そのどれも」という表現に着目します。何枚にアクセスしても「1枚以上」であることや、「そのどれも盗みもトラッシュもしない」という記述から、これはマルチアクセスや強化へのアクセスを含んだアクセスフェイズを経て、ということがわかります。
各ターン、君が最初にアーカイブ以外のカードにアクセスしてそれを盗みもトラッシュもしなかった時
The first time each turn you access a card not in Archives and do not steal or trash it
これは《モウ》ですが、この場合の「カードにアクセス」も、1枚にアクセスすることを指しています。これはちょっと難しいですね…。やはり「それを」が鍵でしょうか。「そのどれも」でないことから1枚と特定するということになりそうですが、それを理解するためには《アウマクア》が複数だということを把握してないとダメで、いくら同時に発売されたとはいえ、《アウマクア》も買って読んでさらに理解できていないと混乱するというと、なんだかちょっと循環論法みたいな…
とにかく、《モウ/Maw》と《アイネアスの密告者/Aeneas Informant》は、カード1枚にアクセスして、それをトラッシュも盗みもしなかった時に発動します。特に《アイネアスの密告者》は、いちどにたくさんのカードにアクセスすればするほど、それだけ効果を得られるカードなので、《アウマクア》との混同に気をつけてください。
みもふたもない結論
ここらへんのテキスト中のカードがa cardなのかcardsなのかは、NetrunnerDBで読める英語版カードテキストで確認しましょう…。whenever you access cardsと来たら、あるカード1枚にアクセスするたび…ではなく、ランのタイミング構成[5.5]に到達するたび、という意味です。
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