アンドロイド:ネットランナーの英語版のみのカードを紹介するシリーズ第1回: Film Critic
リソース:コネ
Film Criticは計画書を1つ搭載できる。
計画書にアクセスするたび、その計画書をFilm Criticに搭載してよい(計画書はもうアクセスされておらず、そしてそれはアンインストールされている)。
, :Film Criticに搭載されている計画書1つを、君の得点エリアに加える。
計画書は自衛能力を持つことがあります。たとえば《オボカタ・プロトコル/Obokata Protocol》の「これを盗むための追加コストとして、4ネットダメージを受けなければならない」や、《未来完了/The Future Perfect》の「これにアクセスした時、0か1か2を両プレイヤーは同時に支払う。金額が一致しないなら、盗まれることは妨害される」など。ランナーにとっては本当に厄介です。
そのような計画書のテキスト枠をガン無視するのが、SanSan Cycle「Old Hollywood」収録の《Film Critic》。一見わかりにくい能力ですが、要するに計画書が持つ「この計画書にアクセスした時」とか「この計画書を盗むための追加コストとして」とか「計画書が盗まれた時」なんかをみんな無視して、アクセスした計画書を自分のリグの《Film Critic》に搭載してよいという驚きの能力なのです(搭載はノーコストで出来るというのもすごい)。あとは自分のターンの好きなときに2クリック支払えば、その計画書はランナーの得点エリアへ加えられます。加えられただけ、つまり盗まれたわけではないので、ここでも計画書の「盗まれた時」の効果を無視します。
《Film Critic》がメタれるカードはそれこそたくさんあります。《ジンテキ:個人改革/Jinteki: Personal Evolution》は1ネットダメージを与えられず、《懲罰的反撃/Punitive Counterstrike》のミートダメージに加算されず、《南サハラ同盟の承認/SSL Endorsement》の上にクレジットは乗らず、《イカワー計画/Ikawah Project》を意識して1クリック残してランする必要もなく、NISEIの作った《SDS無人偵察機展開/SDS Drone Deployment》のためにプログラムをトラッシュしなくていいなど……。
対するコーポは、今に至るも《Film Critic》に有効な対策を持てていないのです。リソースやコネをトラッシュするカードはいくつかあるにはあるのですが、メタカードなのでデッキに入れることはためらわれますし、それらは基本的にアド損を招くように設計されています。だいたい、トラッシュしたところで、ランナーのデッキに《Film Critic》が2枚以上入ってる可能性も十分あるんですよね。ユニークカードじゃないですし。制限カード枠のライバルだった《従業員のストライキ/Employee Strike》が禁止となったので、《Film Critic》はこれから環境に増える可能性があります。
それにしても、なぜ名もなき映画評論家にこれほどのパワーがあるのかが謎です。やはりハリウッドの国で映画の評論を生業にする人々にとっては、4ネットダメージを踏み倒すのもコーポに9クレジット入るのを防ぐのも容易ということなんでしょうか? と思いきや、NetrunnerDBのカードレビューでも「フレーバー的にどういうことなのか不明」ってあるな……。
アンドロイド:ネットランナーの禁止制限改定 MWL 3.2 (2019年5月10日より有効)
MWLとは
注意:この記事の禁止制限ルール MWL は最新のものではありません。上記タグ「禁止制限改定」をクリックし、最新のものを参照してください。
MWLとは、アンドロイド:ネットランナーにおける禁止と制限のルールです。更新されるのはスタンダード・フォーマットとエターナル・フォーマットのそれぞれのMWLであり、そのフォーマットにおいて禁止(もっぱら「除外/removed」と表記されます)のカードは、そのフォーマットのデッキに1枚たりとも入れることができません。そのフォーマットで制限のカードは、自分のコーポとランナーのそのフォーマットのデッキにそれぞれ1種類ずつ、上限枚数まで望む数を入れることができます(IDであれば1枚、そうでなければ3枚までとなります)。
スタンダードやエターナルといったフォーマットについては、こちらも参照してください。
removeanddiscard.hatenablog.com
ソース
3.1から変更された箇所は太字。
スタンダード:コーポ - 禁止
スタンダード:コーポ - 制限
スタンダード:ランナー - 禁止
スタンダード:ランナー - 制限
スタンダード制限解除
《商業銀行家グループ/Commercial Bankers Group》、《Violet Level Clearance》
スタンダード制限/禁止覚書簡易訳
《Labor Rights》と《ラーンブ》
ダウンフォールのリリース後では唯一大会で飛びぬけた成果を出している「Stabby Maxx」というアーキタイプにおいて、両カードはパワーカーブから逸脱しています。私たちは《ラーンブ》だけの制限を望んでいましたが、テストの結果それだけでは不十分で、デッキパワーの心臓部は《Labor Rights》による特定のツールの循環にあることが判明したのです。
《従業員のストライキ》
《ダイレクト・アクセス/Direct Access》のリリースにより、かねてより問題視していたこのカードに着手できました。このような汎用性の高い空白化カードがない環境は、バランスのとれたコーポIDのデザインにもつながります。
《GPI Net Tap》
ダウンフォールのクリミナルのドローカード/ドローの質を高めるカードとの相乗作用により、《アウマクア/Aumakua》、《ルビコン・スイッチ/Rubicon Switch》、そして《ザンバ/Zamba》などとこのカード組み合わせたつまらないクレジット否定デッキが台頭するまえに、このコンボのパーツとしてしか使い道のない《GPI Net Tap》を禁止します。
《ムティ・ムウェクンドゥ》
《ダイレクト・アクセス》があるとはいえ、《従業員のストライキ》がカードプールから消えた世界において《ムティ・ムウェクンドウ》はまだパワーカーブを越えていました。また、このカードを禁止することで、《Border Control》に制限をかけずに済みます。
《商業銀行家グループ》
政治/politicalのカードは息苦しいと嫌われていますが、資財ベースのコーポのデッキがここ数ヶ月、勝てていません。メタゲームに多様性を持たせることでランナーにグレイシャー特化でないデッキを組ませ、それにより相対的にグレイシャーを強化します。
《Violet Level Clearance》
《セレブラル・イメージング》がなければこのカードはそれほど強力なコンボを生み出しません。唯一の例外は《ジンジャ・シティーグリッド/Jinja City Grid》ですが、これも《セレブラル・イメージング》ほど注目すべきものでなく、《Violet Level Clearance》がMWL下にある必要を感じさせません。どのデッキでも使われている《ラシーダ・ジャヒーム/Rashida Jaheem》と比べても貧弱です。
《Mumbad City Hall》
MWLのアップデートに際し、私たちはまず《Mumba Temple》の制限解除に向けたテストをしていました。その中で、《Mumbad City Hall》は《Mumba Temple》と組み合わせた時にあまりに強力であることがわかったことから、まず《Mumbad City Hall》を禁止することにしました。ですが《Mumba Temple》もまたつまらないデッキで悪用されていることから、最終的には《Mumba Temple》の制限解除をとりやめました。ただし《Mumbad City Hall》は面白くなく、将来的にも悪さをしうるため、禁止のままです。
反映されなかったテストについて
過酷で息苦しい《Scarcity of Resources》の制限も検討しましたが、そうするとコーポ、わけてもグレイシャーが大きく弱体化し、そしてランナー、わけてもクリミナルや《Hayley Kaplan》がゲームを支配します。テストの結果、《Scarcity of Resources》だけを制限すれば解決する問題ではなく、ランナーの現状/currentやリソースによるクレジット基盤などさまざまな制限が必要となると判明しています。
《Film Critic》の禁止もテストしましたが、よりバランスがとれフェアでもある《内部告発者/Whistleblower》には《Lakshmi Smartfabics》のような弱点がいくつもあります。現在のメタに《Film Critic》はほとんどいないので、監視を続けつつも、今のところは制限カードとして残します。
NISEI初の拡張、「ダウンフォール/Downfall」日本語版非公式リリースノート:エラッタとテンプレート解説
『アンドロイド:ネットランナー』ファン拡張、日本語版も公開
FFG社は『アンドロイド:ネットランナー/Android: Netrunner』の展開を公式に終了させましたが、私も協力している非営利団体「NISEI」が非公式にカードを製作しています。今回、NISEIの初の拡張となる「ダウンフォール」の日本語版を公開することができました。無料で遊べます。
NISEI - ダウンフォール (Downfall) - 日本語
上記リンクから飛んで、「プリント&プレイPDF…」のところにある「A4 paper size, 3x copy」もしくは「A4 paper size, 1x copy」のハイパーリンクからPDFファイルをダウンロードしてください。この拡張は、全部で65種類のカードから成ります(ちなみに『創造と支配』は全55種類)。
プリント&プレイでカードゲームを遊ぶ場合、別途、不要なトレーディングカードなどの裏紙と不透明スリーブが必要となります。この記事も参照してみてください。
removeanddiscard.hatenablog.com
翻訳を担当した人間のけじめとして、非公式エラッタと新テンプレートの解説をさせていただきます。
リリースノート:ランナー編はこちら。
removeanddiscard.hatenablog.com
リリースノート:コーポ編はこちら。
removeanddiscard.hatenablog.com
非公式エラッタ
3つのエラッタを告知させていただきます。誤訳・誤記により、プレイヤーの皆様に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫びします。
※追記:4つめのエラッタがあります。(2019/06/10)
※追記:以下4つの誤植・誤記について、現在は対処済みです。NISEIのPDFをご確認ください。それ以前にダウンロードされた方にはお手数おかけしますが、再度のダウンロードをお願いいたします。(2019/06/11)
追記:《スペック・ワーク/Spec Work》(209/06/10)
(誤)
ハードウェア:コンソール
(正)
イベント:仕事
機能的な問題
これはイベントです。ハードウェアではないので、インストールできません。現在発覚している中では最悪の誤記です。
原因
当方の手元には、「イベント:仕事」と翻訳したデータが残っています。ですが、何らかの手違いで「ハードウェア:コンソール」と入力され、自分も校正でそれを見落とした形となります。
《トリックスター・タカ/Trickster Taka》
(誤)
君のターンの開始時か計画書を盗んだ時、このリソースに1を置く。
搭載されているクレジットはプログラムへ消費する。
君のターンの終了時、搭載されているクレジットが3以上である場合、「タグを1つ受ける」か「このリソースのトラッシュ」をしなければならない。
(正)
君のターンの開始時か計画書を盗んだ時、このリソースに1を置く。
搭載されているクレジットはプログラムの使用へ消費する。
君のターンの終了時、搭載されているクレジットが3以上である場合、「タグを1つ受ける」か「このリソースのトラッシュ」をしなければならない。
機能的な問題
「プログラムの使用へ消費する(正)」であれば、「《トリックスター・タカ》の上に3クレジットある場合、そのうち2クレジットで《自己変形コード/Self-modifying Code》を使用することはできるが、サーチしてきたプログラムのインストールコスト支払いに残りの1クレジットを使うことはできない」ということが明示されます。
ですが「プログラムに消費する(誤)」の場合、プログラムのインストールコスト支払いのために《トリックスター・タカ》のクレジットを消費してもよいのかどうかが不明瞭となります。
原因
翻訳担当の私(Fobby)の見落としにより、原文の "Spend hosted credits to use programs during runs." を誤訳いたしました。
機能的な問題
機能の上での問題はあまりないと思われますが、それでもテンプレートから逸脱し、混乱を招く誤訳です。
原因
翻訳担当の私(Fobby)の "for each" への理解不足により、原文の "This ice has -1 strength for each installed icebreaker." を誤訳いたしました。
《フォーカス・グループ/Focus Group》
このカードの第一段落にはこのカードをプレイするための条件が、第二段落にはこのカードの能力が書かれていますが、これらの両段落の間に適切なスペースがなく、別々の段落であることが認識しづらくなっています。
機能的な問題
可読性の欠如。
原因
リードトランスレーターの見落としでこのカードのみ校正リストになかったのですが、私も自身がこのカードを校正していないことに気づけませんでした。両者の連絡不足がこのような結果を生み出しました。
翻訳テンプレート
次回も自分が翻訳を担当できるかわからないので、引き継ぎの目的も兼ねて記します。
つねづね疑問なのですが、なぜカードゲーム/ボードゲームの翻訳者は、自身の中にある翻訳テンプレートを公開したり解説したりさせてもらえないのでしょうか。これはニセイも同じです。デザイナーやテスター、イラストレーター、シナリオライターは記事を書きますが、我々トランスレーターがそのような機会を与えられることはありませんでした。
翻訳者も立派なゲーム製作者であり、自分のしごとを解説する義務と権利があるはずです。可読性、原文の尊重、文字数といったバランスをどのようにとったか、不評な難読箇所をなぜそのように訳したかなどさまざまな問題について、翻訳した本人にしかユーザーを納得させることができないはずです。
「しなければならない(なければならない)/must」
「must」はこれまで訳されたり訳されなかったりとまちまちでしたが、以降は「しなければならない(なければならない)」で統一されます。
「しなければならない/must」はルール上、次のような意味を持ちます。
- カードの能力が「しなければならない/must」と指示するなら、プレイヤーは他のカードの能力を使ってでもそれを解決しなければならない。
- 例:ランナーは4クレジット持っていて、「トラッシュしなければならない」を持つ《ムンバッド仮想ツアー/Mumbad Virtual Tour》にアクセスした。トラッシュコストの5クレジットを支払えないので通常であればランナーはトラッシュの義務から免れるが、そのランナーは《インプ/Imp》をインストールしていてその上にウィルスカウンターが1つある。この場合は必ず《インプ》を使わなければならない。
- 「しなければならない/must」の指示がプレイヤーに選択をせまる場合、指定されたプレイヤーはそれらのいずれかを、自分が完全に解決可能なものから選ばなければならない。いずれも解決できない場合は、何もしない。
- 例:《Fairchild 3.0》のサブルーチンが「ランナーは『3クレジットを支払う』か、『インストール状態の自分のカードを1枚トラッシュ』をしなければならない」の選択を提示する。ランナーは2クレジットしか持っていなかったので、「3クレジットを支払う」を選べない。さらに、インストール状態の自身のカードが1枚もない。そのため、このサブルーチンを解決しても何も起こらない。
- 「しなければならない/must」の指示がプレイヤーに選択をせまっていて、そのプレイヤーがその選択肢のうちの1つを選んだ場合、その効果を妨害したり回避したりすることは認められる。
- 例:《データ・レイヴン/Data Raven》にエンカウントしたランナーは、「タグを1つ受ける」か「ランの終了」のいずれかを選ばなければならない。ここで「ランの終了」を選んで、それを《ラッキーチャーム/Lucky Charm》で妨害することは認められる。
- 「しなければならない/must」がひとつの効果のみにかかっている場合、その効果が追加コストの支払いを強制することはない。
- 例:《Always Be Running》の「しなければならない/must」効果によってランナーが《コールドサイトサーバー》のあるサーバーにランをしようとしても、追加コストの支払いまでは強要されない。このような場合にランナーは、ランのための追加コストの支払いを拒否してよく、そして最初のクリックをラン以外のことにあてることが可能である。
- 「しなければならない/must」がプレイヤーに選択を迫っていて、そのプレイヤーがそのうちの「追加コストの支払い」を求める選択肢を選んだ場合、追加コストの支払いを拒否できない。
- 例:《偽起動指令/Forged Activation Order》で《アーチャー/Archer》を選ばれ、それのレゾを選んだコーポは、レゾのためにすべてのコストを支払わなければならない。その過程で計画書を1つ放棄することを拒否できない。(逆に言えば、自分の得点エリアに計画書が1つもなければコーポは《アーチャー》をレゾすることを選べない。)
「しなければならない/must」はFFG/アークライト時代の日本語版ローカライズの際にしばしば無視され、「しなければならない」とあるべき箇所に何も書いていないカードはいくつもあります。そうしていたら、FFGからmust節のルール上の意味を後出しで定義されてしまったのです。困ったアークライトは、そのmust節についてのルールが詳述されている「リファレンスガイド」を和訳する際、「しなければならない/must」の記述をすべて無視しました。翻訳しなかったのです。自分たちのミスを隠蔽するためにルールそのものをなかったことにする。私は、この件にいまだ憤りをおぼえています。
この例に限らず、カードテキストの何気ない語句に後付けでルール上のさまざまな意味を持たせていくのが『アンドロイド:ネットランナー』ですから、こうした問題の再発をなるべく防止するよう今回のローカライズでは心掛けました。
「このリソース/this resource」や「この資財/this asset」など
テンプレートの更新により、以降、自己参照語(《優先請求/Priority Requisition》に「優先請求を得点した時」と書かれているような)は使用されません。「この計画書」「このリソース」「このカード」などと表現されます。
これにより今までと処理が変わった点もあります。《ロキ/Loki》が《ルート・ボックス/Loot Box》をコピーして「このアイスをトラッシュする。」を得たのなら、そのサブルーチンの解決時、トラッシュされるのは《ロキ》が得ている「このアイス」の語が指すアイス、つまり《ロキ》となります。《投資信託の撤退/Divested Trust》のように、「他の計画書」という言葉も使用されていますが、これは冗長なようにも見えます。今後のカードでこのテンプレートが生きる場合が出てくるのでしょうか。
基本MU
ランナーのIDに「4」と書かれているのは、そのIDの基本MUが「4」であるという意味です。今後、IDごとに異なるMUが設定されることが示唆されています。
トレース[N]-
FFGでは基本トレース強度は上付き文字で表現されていましたが、ニセイのカードではトレース[N]-といったふうに表記されます。
「それ」「これ」
「それ」も「これ」もいずれも "it" ですが、 "it" が「このカード」であることが明確である場合のみ、「これ」と訳されます。
同一の単語を文脈に応じて訳しかえるのは訳者の領域を超えるとも思いましたが、自己参照語の代わりに使用される「このカード」と同一の意味で「それ」が使われるのは奇妙なことです。「この」に対応するのは「これ」でしょう。
《サイセンタン/Saisentan》と《コングラチュレーション!/Congratulations!》の「君は」
以下の太字部分は、それに相当する語が原文にありません。
- 《サイセンタン》
- ランナーがこのアイスにエンカウントした時、君はカードタイプを1つ選ぶ。
- When the Runner encounters this ice, choose a card type.
- 《コングラチュレーション!》
- ランナーがこのアイスを通過した時、君は1を得る。
- When the Runner passes this ice, gain 1.
このゲームには「能力を解決する人物を指す主語が明示されていないなら、カードのコントローラーが主語となる」という暗黙の了解があります。ですから、本来これは不要な配慮です
しかし、
ランナーがこのアイスにエンカウントした時、カードタイプを1つ選ぶ。
という文章の主語を「ランナー」ととらえ、「よって、カードタイプを選ぶのもランナー」と考えるのも、日本語話者としては不自然なことではないと考えます。よって混乱を避けるため、以降、このようなテキストに対し「君は」を独断で挿入します。
なお、FFGでもニセイでも、アイスに「君は」という言葉はほとんど使われません。紛らわしいためでしょう。たいていは「コーポは」と書かれます。ですから、アイスに「君は」と書かれていたなら、これは翻訳の過程で後付けされたものとして判別が可能です。
「they, them」
他のカードゲーム同様に「he or she」は廃語となり、以降「they」が使用されます。ただし、他のカードゲーム同様に日本語版は「そのプレイヤー」「そのコーポ」「そのランナー」といった語を引き続いて用いるため、影響しません。
「しているかぎり・するかぎり/while」
新語となります。ただし、「しているかぎり/while」があるからと言って特別な処理は行われないので、さほど重要ではありません。いちおう「しているかぎり/while」は常時能力を示しますが、それを特に意識する場面は今のところありません。
《ドロップ率上昇/Increased Drop Rate》に登場する「ランナーがR&Dでこのカードにアクセスしているかぎり、そのランナーはこれを公開しなければならない」は、《罠!/Snare!》などに見られた「ランナーがR&Dでこのカードにアクセスした場合、そのランナーはそれを公開しなければならない」よりも適切であるとNISEIは考えています。
なぜなら、ランナーは《罠!》にR&Dでアクセスしているかぎり、能力の解決やトラッシュコストの処理中、《罠!》をずっと公開し続けなければならないためです。
「しないかぎり/unless」
「しているかぎり」と違いルール上のやや複雑な意味を持ちます。
《ドロップ率上昇》は「ランナーがタグを1つ受けないかぎり、コーポは悪名を1つ取り除く」という能力を持ちます。「しないかぎり」の前にくる指示は、「内包コスト」として扱われます。タグを受けるのは内包コストの支払いを見なされ、そしてコスト支払いのための行動は妨害したり回避したりできないとの新ルールから、このタグも回避できません。「しなければならない」との違いに注意してください。
また「しないかぎり」の前にくる指示はコストなので、それを完全に解決できないのであれば何もしません。仮に「3クレジット支払わないかぎり」という指示に対し2クレジットだけ払うことはコストの原則に反するからです。
そのほか、《虚無主義者/The Nihilist》の「コーポがR&Dの一番上のカードをトラッシュしないかぎり」は、R&Dが空である場合は「した」ことにできません。
なお、「しないかぎり」の後にくる指示は妨害/回避が可能です。たとえば、《Fairchild》の「ランナーが4を支払わないかぎり、ランの終了。」のサブルーチンを解決したら、ランナーは4クレジットの支払いを拒否してから、ランの終了を《ラッキーチャーム/Lucky Charm》で妨害できます。
「搭載されている/hosted」
これまでにもカウンターやカードを「搭載されている(もしくは、ホストされている)」と表現することはありましたが、テンプレートの更新がありました。
たとえば、カードに「搭載されているパワーカウンター」と書かれていた場合、それは必ず「このカードに搭載されているパワーカウンター」を指します。
《チゼル/Chisel》の「搭載されているウィルスカウンター1つにつき、ホストのアイスは強度-1を持つ」という記述は、「チゼルに搭載されているウィルスカウンター1つにつき、チゼルのホストのアイスは強度-1を持つ」と読みかえが可能です。ホストのアイスが搭載しているウィルスカウンターは参照されていません。
「そして/and」と「その後/then」
"and" や "then" が「同時効果を示す」と定義づけられたため、今後は必要に応じて訳出されます。
- ただし、以下すべてはそれぞれルール上の意味の違いを持ちません。
- 1を得て、そしてカードを1枚引く。
- 1を得て、その後にカードを1枚引く。
- 1を得る。カードを1枚引く。
- 1を得て、カードを1枚引く。
- 最後のものは、FFG/アークライト版訳。ルール上の問題もなく字数も節約できるのだが、このゲームには「することで、してよい/to」という紛らわしいキーワードが存在する。
以下2つはルール上まったく異なります。
- 1を得て、カードを1枚引く。
- 1を得ることで、カードを1枚引いてよい。
私見では、「『ことで』がない」ということを見極めるのは難しいが、「『そして』や『その後』がある」ということを見極めるのは比較的容易と感じます。誤読を防ぐためにも「そして」「その後」を使用します。
「持つ/have」と「有する/get」
アイスやアイスブレイカーの強度、あるいは手札上限の修整を示す語です。特にアイスブレイカーの強度修整を示す「get」は新語となります。
これまでの「have」は「強度+1。」「手札上限+1。」といったふうに省略されてきました。実際それでなんの問題もないと考えていますが、今回、公式リリースノートに "have" と "get" についてわざわざ紙数が割かれていたことを尊重し、以降は省略されません。
「より大きい」、「より多い」、「を超える」
「以上」とは異なります。仮に「3より大きい」「3より多い」「3個を超える」と書かれている場合、すべて「4以上」という意味で3を含みません。日本語としては直感に反する記述であるため、注意してください。
《厳粛/Khusyuk》は「1以上である数字を1つ選ぶ」、《アフシャー/Afshar》は、「これの表記サブルーチンを1つしかブレイクできない」とそれぞれ読みかえ可能です。
「1つ」、「1個」、「1枚」
単位の違いが意味を持つことはありません。たとえば「カードを1枚」と「カードを1つ」はまったく同じ意味を持ちます。また、「サブルーチンを1個」と「サブルーチンを1つ」も同じ意味です。「2ネットダメージ」と「2点のネットダメージ」も同様です。
「そうでない場合/otherwise」を「そうでなければ/otherwise」へ変更
「場合・なら/if」が常時能力を示す語と定義されていることから、「そうでない場合/otherwise」を「そうでなければ/otherwise」に置き換えます。もっとも、「『場合』が常時能力を示す」と言っても「Xである時、Yである場合、Zする(《地下世界の接点/Underworld Contact》のような)」は条件節能力ですし、そもそも「otherwise」がおそらくは常時能力なので、余計な配慮である可能性が高いと思われます。
「Bをもって、Aしてよい/you may A by B」
《ゲーム・オーバー/Game Over》にはこのように書かれています。
(日)
ランナーは3ずつの支払いをもって、それらカードのうち望むものがトラッシュされることを妨害してよい。
(英)
The Runner may prevent any of those cards from being trashed by paying 3 each.
「支払いをもって」という言葉をあてた「by paying」ですが、この「by」は今までに一度も登場したことのない、新語です。「The Runner may pay 3 each to prevent any of those cards from being trashed.」といった既存の書き方をしなかった理由はよくわかっていません。
この支払いは、「することで、してよい/to」や「しないかぎり/unless」のように内包コストなのか、それとも「そうした場合/if you do」のように別のものかとルール部に問い合わせたものの、なんの返答もなかったのです。
とはいえ、あとでどんなルールが後付されてもいいように、「をもって/by」という訳語を当てました。
カギカッコ
カギカッコの多用が目につくという方もいらっしゃるかもしれません。ですが《投資信託の撤退》にはカギカッコが絶対に必要でした。仮にこれが
5を得て、そして盗まれた計画書をHQに加えてよい。
であった場合、「5クレジットを得るのは強制。計画書をHQに戻すのは任意」と読めてしまいます。カードゲームによっては、このような場合に
5を得てよい。そうした場合、盗まれた計画書をHQに加える。
と意訳するケースもあるようです。機能としてはきちんと成立するのですが、自分はFFGの「そうした場合」のルールミスを指摘してUFAQを更新させたことがあるので、勝手に「そうした場合」を加えることにも抵抗があります。
Thanks to an astute observation from @RemoveNDiscard we have issued an updated UFAQ entry for Skorpios vs Scavenge (we failed to revisit the question after the errata for Scavenge was issued) pic.twitter.com/Up2FL2szF2
— NISEI Rules Team (@NISEI_Rules) September 22, 2018
なので、ここはカギカッコで対処します。その他にも、カギカッコがあったほうがわかりやすいと思った場合は無遠慮にそうしています。
これに関しては皆さんのご意見も伺いたいところです。フィードバックをお願いします。
marshmallow-qa.com